001総教C030705H29最終稿(加藤)
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「探究」という言葉を聞くと,どのような学習をイメージするだろうか。子どもたちが課題・問題に対して調べ学習を進める,自分たちで考えた方法で調査をする,まだわからない問題を解決するべく,これまで学習したことなどを生かしながら問題解決にあたるなど,様々なイメージが出てくることだろう。 現行の学習指導要領では習得・活用・探究という学習の流れが提示され,各教科等においてその実践が積まれている。その習得・活用・探究は各教科等においては習得・活用を,総合的な学習の時間を中心に探究をと,役割分担を明らかにしていた。しかし,平成28年に示された教育課程部会における生活・総合的な学習の時間ワーキンググループの取りまとめの中で,「探究の過程を意識した学習を行うことは総合的な学習の時間だけのものではない」(1)ことや,中央教育審議会答申(以下:答申)の中で「各教科等における習得・活用・探究という学びの過程において,各教科等で習得した概念(知識)を活用したり,身に付けた思考力を発揮させたりしながら」(2)資質や能力が育まれることなどが示された。つまり各教科等において習得・活用・探究の過程を意識した学習を展開することが求められているのである。 習得・活用・探究を通じた学習が各教科等で求められるようになったのは,子どもたちに求められる力と大きく関わりがある。平成8年の答申には,「変化の激しい,先行き不透明な,厳しい時代であること,そのような社会において,子どもたちに必要となるのは,いかに社会が変化しようと,自分で課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力」(3)という記述がある。この記述に見られるように,当時,これからの子どもたちには課題に対して自ら関わりをもち,その解決に向けて考えることができる生きる力を身に付けることが求められた。生きる力の育成が学校教育の目標であり,各教科等が連携を図るとともに,教科横断的な内容を扱う総合的な指導を一層推進する新たな手立てとして総合的な学習の時間が創設されたのである。また,その目標達成をより明確化したのが現行の学習指導要領である。平成20年の答申では,「生きる力で重視している思考力・判断力・表現力等,学習意欲(中略)などに課題がある」(4)とされた。その課題を克服すべく各教科等にお小学校 学習指導法 1 (1)文部科学省「教育課程部会 生活・総合的な学習の時間ワーキンググループ『生活・総合的な学習の時間ワーキンググループにおける審議の取りまとめ』」http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/09/12/1377064_2.pdf 2018.3.2 (2)文部科学省「中央教育審議会『幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)』」2016.12 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf 2018.3.2 (3)文部省「中央教育審議会『21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)』 1996.7 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/old_chukyo/old_chukyo_index/toushin/attach/1309612.htm 2018.3.2 (4)文部科学省「中央教育審議会『幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学校指導要領等の改善について(答申)』」 2008.1 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2009/05/12/1216828_1.pdf 2018.3.2 (5)前掲(2)p.6 いては基礎的・基本的な知識・技能の習得とその活用を,さらに各教科等で身に付けた力を総合的な学習の時間において探究的な学びを展開することで思考力・判断力・表現力等の充実した育成を目指し,課題の解決を図ったのである。 では,現在ではどのような課題があるとされているのであろうか。平成28年の答申では,「学ぶことと自分の人生や社会とのつながりを実感しながら,自らの能力を引き出し,学習したことを活用して,生活や社会の中で出会う課題の解決に主体的に生かしていくという面から見た学力に課題がある」(5)と示された。これまでに求められてきた力と重なる点もあるが,大きく三つの課題が見えてくる。一つは学習と社会とのつながりを実感することができないということ,一つは学習し,身に付けたことを課題の解決に生かせていないということ,一つは自ら課題に向かう力が希薄であること,この三つである。これらの課題は,変化の激しい知識基盤社会の中で生きていく子どもたちに身に付けることが求められている力である。子どもたちがそのような力を身に付けるために行う,自ら課題を見出し,その課題解決に向けて自ら働きかけていく学習こそ,各教科等を通じて行うことが求められている探究的な学習である。 今充実が求められている探究的な学習の在り方について,本稿で明らかにしていく。 はじめに

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