ーズに合った自動車を生産しているということをとらえている。消費者のニーズだけでなく,社会のニーズに応えるため環境にやさしい自動車などが開発されていることもとらえている。その代表となるハイブリッド車は販売より普及率を高めているが,それでも新車販売される自動車の4割にも満たない。多くは従来のガソリン車である。自動車工業に従事している人の思いを学習し,開発や社会のニーズなどを理解してきた子どもにとっては,予想よりも低く感じる数値だと考えた。社会のニーズに応えるために開発していった生産者の視点と消費者のニーズが必ずしも一致するものではない,というギャップに困惑すると考えられる。しかし,消費者には消費者の考えがある。ガソリン車の方が購入費を安く抑えられるとともに,燃費も改善されてきている。このような生産者と消費者の立場をふまえ,今後の自動車工業はどうあるべきか,子どもたちに判断を求め,そのうえでこれから未来に向けてどのように自動車工業があるべきか,今後の発展について自分の考えをもつことができるようにしたいと考えた。 実践では,まずそのガソリン車とハイブリッド車の普及の比較の資料を提示した。 自動車の燃費や価格を提示するとともに,第1時で使用した保護者のアンケート結果を提示した。それぞれの資料を総合して考えた結果,環境にはよいが価格は高い自動車を開発すべきかどうかを子どもたちに判断させた。 T ハイブリッド車の販売台数はどうなってますか? C 増えていってる。 C でも少なくない? T ハイブリッド車以外の車はどうかな? C 減ってきているけどハイブリッド車より多い。 C 環境にいい車なのに。 C ハイブリッド車は増えてるけれどまだ少ない。 C (環境を)よくしようとしている人が増えているということだ。 C ハイブリッド車は増えているけれどまだガソリン車の方が多い。 T (消費者が)意識はしているようですね。でもなんでなかなか増えないの? T 考えたこと教えてください。 C1 ガソリン車を使うと大気汚染が進んでしまうから(環境にやさしい車がいい)。 C2 ガソリン車はそんなに燃料がないけど(燃費は良くない),まぁまぁ安いから。 C3 燃費が全然違うから,ハイブリッド車の燃費をさらに向上させたらいい。 C4 ハイブリッドの燃費が上がると,さらに値段が上がる。 C5 自動車がどんな場面でよく使われるか,多かったアンケートを見ると,買物とか送り迎えなど多いので,普段頻繁に使うことが多いから,いっぱい使うと排気ガスがたくさん出てしまう。(だからハイブリッド車) C6 私はガソリン車からハイブリッド車に変わりました。理由は資料を見て,大気汚染の問題は将来空気が悪くなったりして,環境に悪い。ハイブリッド車は値段が高いので開発して安くできたら…。 小学校 学習指導法 19 このように,子どもたちがそれぞれの視点からどのような開発を進めていくべきかを考えていることがうかがえる。環境を第一に考え,ハイブリッド車にすべきであるという意見をもつ子どもと,比較的に価格の安いガソリン車をと考えている子どもと別れている。しかし,それぞれの立場においても単元の冒頭で取ったアンケートを根拠としながら主張している姿がうかがえる。また,議論の中で,C6の子どものように自分の立場が変化した子どもも見られた。この話合いでどちらが正しい,という結論は導き出すことは難しいが,この話合いを通じて子どもたちが自動車に対する考え方を再構成し,さらに今後の自動車工業がどうあるべきなのかを考える契機とすることができたと考えられる。子どもたちには次のような振返りが見られた。 よりよい自動車を生産するために自動車を速く正確につくり,開発を進めるという第8時までの子どもたちの考え方が,消費者の目線にも立った開発であることや,自動車を選ぶ際の自分と自動車との関わり方を考えるなど,新たな視点を獲得し,自動車工業の今後のよりよい在り方について考えることができ,工業生産についての視野を広げ,理解をさらに深めることができたといえよう。 段頻繁に使うことが多いから,いっぱい使うと排気ガスがたくさん出てしまう。(だからハイブリッド車) C6 私はガソリン車からハイブリッド車に変わりました。 理由は資料を見て,大気汚染の問題は将来空気が悪く なったりして,環境に悪い。ハイブリッド車は値段が 高いので開発して安くできたら…。 C7 どんな場面に使うのかのアンケートで,距離が短いものによく使われるからそんなに長い距離を走る必要が ない。そんなに排気ガスも出ない(からガソリン車で 十分)。 C8 自動車は結局長い距離を走るので,ずっと使っていた ら結局排気ガスはたくさんでる。 ・初め環境によい自動車を開発すべきだと思っていたけど,最後にはハイブリッド車は高いという人もいるから,そこはガソリン車を選ぶのは仕方ないなと思って,開発すべきかどうかわからなくなった。 ・私は最初絶対に開発すべきだと思っていたけど,いろいろ意見を聞いてどちらの立場もわかりました。でも,やっぱり地球を大切にしたり環境を大切にしたりする開発をしていってほしいと思います。 ・やっぱり消費者なんだなと思った。最初選んだ時はかっこよくて安いしか考えてなかったけど,環境・地球も考えないといけない。でも,それだけ考えたらとんでもないお金になってしまうので,消費者を考えて開発してほしい。 ・どちらも必要だと思った。最後に決めるのは消費者だから,消費者にそれぞれのよいところ,悪いところを判断してもらうことが大切。
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