001総教C030705H29最終稿(加藤)
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小学校 学習指導法 13 うな学習の振返りが見られた。 ・今回の学習で私は本当に土というものは重いものだと知りました。約130年前の人々の力の源,つまり(琵琶湖疏水をつくった)目的を詳しく知りたいです。 ・今は,機械とかもあるからあんまり人の手はいらないけど,昔は全部手作業でやっていたし,本当にすごいなと思いました。重いものをあんなに長く運ぶなんて私はできません。 ・トロッコに砂や石を入れるのも大変だということと,持ち上げれても運ばないといけないからすごく時間がかかるんだと思いました。 このような学習場面を意図的に計画して入れることにより,子どもたちは現在から離れた時間である琵琶湖疏水建設当時の様子について思いを寄せるとともに,その当時の工事を自分事としてとらえながら学習する姿が見られた。疑似体験をしたからこそ当時の人々の苦労に思いを寄せることができているのがわかる。資料から読み取った事実が子ども達にとって実感を伴ったものに変わり,学習対象に子どもたちがさらに近づくことができたということができる。 <問題意識の醸成> 次に本単元における学習問題の設定についてである。本単元では単元の学習問題を2つ設定した。第3時の段階で設定する「琵琶湖疏水はどのようにつくられたのだろう」と第6時で設定する「なぜこのような大変な工事をしてまで琵琶湖疏水をつくったのだろう」である。 一つめの学習問題を追究するための本時の問いの設定について,第5時を示す。 第4時の学習で子どもたちは琵琶湖疏水の工事について実感を伴いながらその大変さや苦労を理解することができている。第5時ではさらにトンネル工事について考えていく。まず,側面掲示している琵琶湖疏水の地図を確認しながら,最も大変そうな工事はどこかを子どもたちに問い,トンネル工事に焦点を当てていく。さらに映像資料を確認することで,山の中にある疏水の関連施設である竪坑に着目することで,どのようにトンネル工事が行われたのか,問題意識を高めることができると考えた。実践では次のような姿が見られた。 T ちょっと地図を確認してみましょう。琵琶湖疏水ってど C 20km以上。 T その中で特に大変そうなのはどこやった? C トンネルのところ。 C ここ…山。 T 山やトンネルが一番苦労したと思う?なんでそう思うの? C 山はぶつかってしまうから掘らないといけない。 のくらいあったかな。 でも子どもたちが実感を伴って先人の業績をについて考えることができるような場面を設定することが必要となる。そのための具体的な取組について第2時と第4時を例に示す。 まず第2時である。実際に子どもたちが見学をして学習問題を解決したり新たな課題を見つけたりすることができればよいが,本単元で扱う教材の琵琶湖疏水は,滋賀県から京都府までの全長が20㎞以上であり,全てを見学することが難しい。そこで現在疏水が実際に流れている各場所の映像や写真,地図等を提示し,全体像を把握するとともに,自分で資料を選択しながら調べることができるようにした。図3-2はその学習の様子である。 図3-2 映像資料等を用いた琵琶湖疏水の調べ学習 琵琶湖疏水が人工的な川か自然の川か,提示した各資料を自分で選択し,興味をもって意欲的に調べる姿が見られた。全体像を把握しながら,なぜ人工的な川といえるのかを様々な角度から根拠を示し,学習問題の設定につなげることができた。 第4時には実際の工事の様子について調べた。当時の工事の様子を示した絵を提示し,どのような道具を使って行ったのか,その様子はどうであったかを調べていく。絵から手作業であることや今のような機械は使っていないことをとらえた子どもたちは,大変そうだ,とても苦労しながら工事をした,という言葉で学習をまとめていた。しかし,本当に子どもたちはその工事の大変さを感得しているのだろうか。言葉では大変そう,見た目で苦労している,といった言葉を子どもたちは使うが,当時の工事がいかに大変であるのかを体感することで,先人の苦労をより実感的にとらえることができると考えた。そこで,工事で使われた道具に模したものを作成し,実際にそこに砂を入れて運んでみるという体験を行った。図3-3はその体験の様子である。子どもたちはこの体験を通じて工事の大変さを実感し,琵琶湖疏水の工事により思いを寄せることができた。子どもたちからは次のよ図3-3 昔の工事体験

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