るが,具体的な活動を取り入れることで子どもたちは自分事として社会的事象をとらえるようになる。全ての場面で見学やインタビューなどの体験ができるとは限らない。しかし,そのような場合でも可能な限り子どもたちが実感できるような場面を設定したり,自分の調べる視点に応じて資料を選択して調べたりすることができるように手立てを講ずる。そうすることで子どもたちの主体的な学びが展開され,習得a・活用aのサイクルが充実した基礎的な探究が実現できるとともに,発展的な探究へと子どもの学びを連続させることができる。 イ 発展的な探究における活用の在り方 子どもたちが基礎的な探究を通じて習得した概念をどのように生かすか,その生かす場面の設定に視点を当てる。まず,習得Aにおける概念を整理し,その概念を発展的な探究における活用Aの場面でどのように生かすのかを考える。そしてその活用場面につながる知識は単元のどの時間に習得することができるのか教師が把握し,子どもの思考の流れを大切にしながら確実に習得できるような単元を構想するとともに,授業を展開する。そうすることで,基礎的な探究で身に付けた習得Aを適切に生かす活用Aの場面を設定することができ,その活用を図ることで子どもの思考を深めることができよう。 また,小学校段階では多角的な視点で社会的事象をとらえることが求められている。つまり,立場を違えて人・もの・ことをとらえることが必要となる。ある立場からの視点だけではなく,違う立場から社会的事象をとらえるようにしたり,子どもたちが獲得した概念とは異なる視点からとらえた社会的事象を提示したりすることで,多様なものの見方・考え方ができるようになる。このように多角的に社会的事象をとらえることで,現実の社会がよりわかり,根拠を明らかにしながら社会問題に対する解決策について選択・判断したり,未来を志向したり,自分の意志を決定したりすることを目指した学習の充実を図ることができる。そしてそれは子どもたちが社会に出ていくときに必要な合理的意思決定能力を育む基礎を育てることにもつながると考える。 (2)算数科における方策 ア 主体的な学びを目指して 小学校 学習指導法 10 子どもたちが主体的に学習に向かう方策として次の二つの視点から考えたい。 第一に子どもたちが問題意識をもつことができるようにすることである。教師が提示した課題をただ解くだけでは,子どもたちが主体的に学びに向かっているとはいえない。主体的に取り組むためには子ども自身が問題意識をもち,自らその問題について考えようとする意欲をもてるようにしなければならない。そして「この場合はどうなのかな」「もっといい考え方はないのかな」など,一つの問題を解決したことにより習得した知識・技能を他の場面で活用することを考えたり,よりよい考え方はないかを模索したりすることができるよう,基礎的な探究における習得aと活用aのサイクルを意識し,子どもの思考の流れに沿って学習を構想することで,学びが充実していく。 算数科は系統性の強い教科である。学習を構想していく上で各学年・場面で教える内容を精選して学習を展開しなければならない。その単元で学習すべきことを包括し,目標を達成するために必要な問題は何か,また子どもの問題意識とはどのようなものなのかを考える。さらに一つの問題が解けても,その考え方だけでは解けない問題があることに気付けるようにし,問題意識を連続してもち続けることができるような仕掛けを単元構想や本時の学習の中に取り入れていきたい。 第二に,子どもたちが算数科を学習することがたのしいと感じるとともに,その有用性が実感出来るよう,現実の世界と数学の世界の往還する場面を,意図的・計画的に単元に位置付ける。数学の世界の現象だけを切り取って考えていくと,子どもは自分と学習対象がかけ離れたものとしてとらえてしまうことが考えられる。数学的活動を通して育成すべき資質・能力は中学校・高等学校と同じ方向性にあるが,小学校段階では,数学として抽象的で論理的に構成された内容にはなっていない。そのため,数学の世界だけのアプローチで終わるのではなく,子どもたちが現実の世界のこととしてとらえることができるような問題や教材を開発することで,より主体的に算数の学習へと関わることができるとともに,そこで培われた意欲は数学の世界に問題を追究する上でも,主体的な学びを展開することにつながると考える。 そこで,算数の単元を構成する際,日常生活に生かすことができる場面や,子どもたちの生活と結びついている場面を考え,効果的に取り入れた学習計画を構築する。その時間の主問題として現
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