これは次の図2-3のように示すことができる。 基礎的な探究の過程で,子どもたちが学習対象と主体的に向き合うことができるような手立てを講ずることで,その距離が縮まるとともに,自分の考えや立ち位置が明確になり,よりよく知識・技能を習得することができる。その習得した知識・技能を適切に活用する発展的な探究の場面を設定することで,より深い理解を獲得したり,意味や価値を創造したりすることができるようになるのである。 第3節 探究的な学習の充実を目指した方策 (1)社会科における方策 ア 主体的な学びを目指して 子どもたちが主体的に学習に向かう方策として次の二つの視点から考えたい。 第一に子どもたちが明確な問題意識をもつことができるようにすることを挙げる。 社会科では単元の学習問題と本時の問いがある。まずは単元の学習問題づくりを丁寧に行いたい。それぞれの単元で学習する社会的事象は,子どもたちと本来的には身近にあるもの,全く離れているもの,身近にあるが気付いていないものなど様々である。その社会的事象の不思議さ,疑問,関係性などに目を向けることができるようになったとき,子どもと学習対象との距離が近づき,主体的に学習に向かうことができるようになる。 次に本時の問いづくりである。単元の学習問題とは別に毎時間の問いを子どもの疑問を基に明確に設定する。社会科の時間のみならず,授業計画を立て,子どもたちが学習の見通しをもつことができるようにしている授業が増えている。これは子どもたちにとって非常に有意義なものである。しかし,その計画と本時の問いが同じであるととらえられてしまい,その時間の学習が子どもたちにとって学びが十分主体的にならないといった授小学校 学習指導法 9 図2-3 子どもと学習対象との関わり方 業も見られる。例えば,第5学年のコメ作りのさかんな地域の学習において,図2-4のように学習問題,学習計画を設定したとする。 図2-4 学習問題と学習計画,本時の問いの例 このように学習問題とともに学習計画を設定することで,子どもたちは学習の見通しをもってその単元の学びを追究することができよう。 2時間目には自然条件について調べることが学習計画として立てられている。しかし,ここで学習計画をそのまま本時の問いとすると,非常に曖昧な問いとなってしまう。何をするかはわかっているが,なぜそれを調べるのか,どのような視点で考えていくのかがこれではなかなか明確にならない。学習計画で立てた視点は学習する大まかな内容であり,問題として追究する視点が十分醸成されていない。学習計画に基づいた本時の問いにつながる資料等を提示し,子どもたちの問題意識を高め,その時間にどのような視点から何を学習するのかを明確にする手立てをとることで,子どもと学習対象との距離が縮められ,子どもたちはよりその学習に対して主体的に取り組むことができるようになる。 また,併せて問題意識も連続できるように留意していきたい。子どもは学習問題を立てた段階で複数の疑問点をもっている。その問題を解決していく過程で様々な視点をもつことができる。しかし,学習問題を設定した段階では子どもたちには見えていない事象もある。その時間の学習から子どもが見出した疑問や,習得a活用aのサイクルの中で身に付けた知識・技能を活用することで考えられる視点からさらなる計画を組み立てていくことになる。時には新たな単元の学習問題を設定し,さらに追究する計画を立てていくこともあるだろう。このように子どもの問題意識を醸成しながら学びを築けるようにしていく。 第二には子どもが自分事として考えられるような活動を取り入れたい。子どもの発達段階にもよ
元のページ ../index.html#11