図2-2 算数・数学の学習過程のイメージ この図では,日常生活や社会の事象を数理的にとらえ,数学的に処理し,問題を解決するプロセスと,数学の事象について統合的・発展的に考え,問題を解決するプロセスの二つが示されている。問題発見と問題解決のサイクルが日常の事象と数学の事象の二つの場面から考えることの必要性が示されている。数学の事象として統合・発展的にとらえたり,日常生活の問題を解決したり,この二つの場面を往還することが求められている。この二つの場面を往還することで,算数のよさを認識するとともに,学ぶたのしさや有用性,意義が実感できるようになり,子どもがさらに主体的に学習に臨むことができるようになる。また,日常から切り取った数理的な事象について習得した知識を発展的・統合的に活用し,数学的な思考を深めることでも,その学びに対してさらに主体的に関わることもできよう。実際の指導においても,教科書の問題を提示するだけではなく,子どもたちが日常と算数との関わりを考えることで,子どもたちは何のために学ぶのか,なぜ学ぶのか,その理由が明確になる。そしてその動機付けが問題解決へ向けた意欲を喚起し,子どもたちが主体的に学びに向かい,充実した学習を実現することができるようになるのである。 次に,活用場面の設定である。子どもたちが学んだことを生かす場面を単元の中に意図的に設定することで,習得したことが活用され,活用しながらさらなる習得を図ることができる。そのような活用場面を適切に設定すること,習得した知識・技能を明確に生かすような場面を意図的・計画的に構想することは重要である。しかし,多くの場合,単元の終盤では,教科書等の単元末のまとめなどの問題を解くなど,習得した知識・技能の定着を図る問題を解くことが多かったのではないだろうか。もちろんこのように知識・技能の確実な習得を図ることは重要だが,それに加え,習得した知識・技能を活用する場面を設定することは,小学校 学習指導法 8 学習を充実したものにするうえで重要である。習得した知識・技能の活用が図れる適切な活用問題を設定していく必要があろう。 (3)探究的な学習における課題とは 探究的な学習における社会科と算数科における現状からそれぞれの課題を挙げた。以上のようなことから探究的な学習における課題を次のように整理できる。 一つ目は,子どもの主体的な学びである。社会科における社会的事象や,算数科における数量や図形等に着目してとらえた事象などの学習の対象(以下:学習対象)は本来子どもの世界から離れた存在であったり,認識できていなかったりするものであることが多い。しかし,探究的な学習を展開する上で,この学習対象を子どもたちが追究していきたいと主体的に学びに向かうことができるようにする必要がある。主体的に学習に向かうことで,子どもたちは自ら進んで知識・技能を習得するとともに,習得した知識・技能を活用して思考・判断したり表現したりするようになる。このような学習が展開されることで基礎的な探究における習得aと活用aのサイクルが充実したものとなり,発展的な探究へとつなげることができる。主体的に学習に向かうことができるようにするためにどのような手立てを単元を通じて講じていくか,という点が課題の一つ目である。 二つ目は探究の学習プロセスの中で,どのように習得した知識・技能の活用を図るかである。本研究では習得aと活用aのサイクルを繰り返す基礎的な探究と,そこで身に付けた習得Aを生かす活用Aの発展的な探究の場面を単元に位置付けている。基礎的な探究における習得a・活用aのサイクルの充実を図ることは非常に重要である。その基礎的な探究を基盤とした発展的な探究の場面の在り方を考えていきたい。これまでも単元の終末に様々な形の学習は行われてきている。しかし,探究的な学習として考えた時,それぞれの教科で各単元の終末に習得した概念的な知識や一般的な法則を適切に活用する,意図的・計画的な場面が設定できていたかを振り返ってみると課題が残る。 以上のことから,探究的な学習における課題として次の二点を挙げる。 1)子どもが主体的に学習対象に向き合うことができるか。 2)習得した知識・技能を単元の終末にどのように活用するか。
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