する技法である。 ⑤般化 般化には2つのとらえ方がある。1つ目は,教えたスキルが指導場面以外の場所や相手であっても用いられるように指導者が促すこと,2つ目はスキルが日常的に用いられるようになっている状態のことである。この項は前者の説明である。 言語的な教示や,日常生活の中での目標を設定するなどしてスキルの使用頻度や適応場面を増やす。具体的には学んだことをいつ,どこでやってみるかを教示したり話し合ったりすること,機会あるごとに教えたスキルを思い出させたりすることが考えられる。 LD等支援を必要とする児童生徒を対象としたSSTでは,指導場面ではスキルを発揮できるのに,日常場面ではうまくいかないといった般化の段階での問題が少なからず起こる。これは例えば,学級において本人への評価が固定化されてしまっていたり,特性についての理解が進んでいなかったりして適切な対応がなされないために,本人がスキルの発揮をためらったり,やめてしまったりする結果である。こういった環境では本人はスキルを発揮することができず,結果的にSSTでの指導効果は減退,消滅する。児童生徒にとって身近な居場所である学級,家庭,LD等通級指導教室等が一体となってSSTを行うことで,学んだソーシャルスキルを使用する場面や回数を保障し,般化につなげることが不可欠である。 現実の場面で試みる機会を与えたり(ホームワーク),SST場面以外の社会的場面でアドバイスをもらえる機会を設けたりすることで,スキル活用回数を増やし,その中で成功体験を重ねることが大切である。 ○ロールプレイ 現実場面を想定して役を演じ疑似体験をすることで,ある事柄が実際に起こったときに適切に対応できるようにする学習方法である。モデリングやリハーサル時に用いられることが多い。対象の児童生徒にとって想像可能な具体的な場面設定や役を演じやすい環境設定を行い,その中で繰返し体験することが重要である。 LD等支援を必要とする児童生徒を対象とする場合は,その時の本人の状態や周囲の状況によって参加しにくいことが考えられるので,動作を代替できるペープサートや人形,本人の考えを聞いた上での指導者による代理演技などの準備をしておくことも大切である。 小学校 総合育成支援教育 7 表1-3はその他のSSTの指導要素について筆者がまとめたものである。 児童生徒の実態や指導中の様子に合わせて,基本となる5つの指導技法に組み合わせることで,より効果的なSSTとなると考えられる。また,これらの手法は基本の5つの指導技法とともに,互いに補完関係にあるので指導順序や内容は児童生徒に合わせて変更することができる,柔軟性をもったものとしたい。 (2)個別指導のSST 一般的に,SSTは小集団やグループなどの集団指導で行われ,それが標準形である。その理由は対象者が複数いることで,すでに社会的場面が設定されており,その中で対象者同士のモデリングやフィードバックを指導の中で行うことができることに加え,実際の場面に極めて近い形でスキル使用をする体験ができるからである。学んだスキルの般化のためには,実際の場面での体験が確保され,その体験が成功を伴うことが重要であるというのが通説であるが,集団で行われるSSTは,これらを実現しやすい指導形態であるといえる。 一方,指導者と一対一で行われる個別指導のSSTは,小集団やグループへの不適応が見られる対象者をサポートする指導の形態としてよく用いられる。ここではゲームや絵カード,架空のストーリーなどを用いたシミュレーション学習が用いられることが多い。 シミュレーション学習とは,「今ここに実際にある社会についての実体験ということではなく,指導場面に仮想した社会を設定して,その場での振る舞いを考えたり,模擬的に学んだり,認識を深めようとする方法」(15)である。この方法は,場面を色々に仮想することによってあらゆるソーシャルスキルについて考えることができる長所をもつ。架空の場面に対して適当な反応はどういうものかを考えたり,その考えを指導者と話し合ったりしたうえで,日常の生活場面でスキル発揮できるようにする方法である。 図2-1は本市LD等通級指導教室において行った表1-3 その他のSST指導要素
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