001総教C030705H29最終稿(馬場)
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が,学校現場での指導との親和性は高く,教師のもつ指導の専門性と組み合わせることで,特に情緒や行動に困りを抱える児童生徒に対して高い効果が期待できる。これまでにもSSTに関する多くの研究が行われてきており,そこで用いられる技法は大きく5つの段階に分類される。 図1-3はSSTでよく用いられる指導技法を筆者が整理したものである。 必要なソーシャルスキルを発揮するためのコツを説明し,理解させること。SSTの中の様々な場面で繰り返し行われる技法である。与えられた状況でソーシャルスキルがどのように機能するか,ソーシャルスキルを用いた結果どのようなことが起こりうるかといった情報を与える。これにより,SSTで身に付けるスキルがより明らかとなり,対象児童生徒の意欲喚起にもつながる。 SSTで行われる教示はそのほとんどが言語で行われるが,LD等支援を必要とする児童生徒の中には言語面につまずきをもち,これを苦手とする子も多い。そのため,SST全体を通して教示の内容を,言語という単一の方法だけではなく,視覚や触覚などその他の感覚も併用して与えることに留意し努めることが大切である。 ②モデリング 特定のソーシャルスキルを使用する場面を視覚的に示し,それを観察させること。前述の「教示」を視覚的かつ非言語で行う方法ととらえることもできる。後述する現実場面を想定して役を演じ疑小学校 総合育成支援教育 6 図1-3 SSTの基本的な指導技法と要素 実線で囲まれた5つの指導技法を基本とし,点線で囲まれたその他の要素を児童生徒の実態や指導環境に合わせて付加していく。それぞれの名称や内容,使用順序は必ずしも固定化されたものではないが,多くのSSTでは概ねこの順で行われている。それぞれの技法に対する本研究での位置付けは以下の通りである。 ①教示 似体験する方法(ロールプレイ)を用いて,対象児童生徒に演じさせたり,指導者が演じたりして示すこともあるが,場面に合わせて写真や映像,イラスト等を用いて行うことや,実際の活動の中で生起した出来事や仲間の言動をモデルとすることもある。適切なスキルと対比させるために不適切なスキルを示すこともあるが,その際は対象児童生徒の誤学習につながらないように十分配慮し,児童生徒が期せずして不適切なスキルを用いてしまった場合は本人の気持ちが決して悲観的なものにならないように気を付けながら修正させる。 また,適切なモデルであっても現実場面では他者に拒否されることがあるので,拒否された時にどうすればよいかという情報までを含めて提示する必要があると考える。 ③リハーサル 「教示」「モデリング」で得た知識・イメージを模擬場面で練習させること。SSTで不可欠となる体験の確保につながる技法である。LD等通級指導教室ではゲームの中でスキル練習をしたり,ワークシートを用いて練習したり,スキルを言葉で何度も復唱したりすることで行うことが多い。また,現実場面を想定して役を演じ疑似体験する方法(ロールプレイ)が用いられることもある。 LD等支援を必要とする児童生徒の場合,疑似体験だけではスキルの般化につながりにくい場合があるので,同じスキルを様々な場面で練習することのできる多層的かつ連続的な取組の計画が必要である。 ④フィードバック 対象児童生徒の見せる言動に対して,どのような行動をしたからどんな結果につながったか,を具体的に伝えること。スキルを対象児童生徒に身に付けさせるために用いる技法で,肯定すること(正のフィードバック)と修正を求めること(負のフィードバック)の2つに大別できる。肯定する場合は行動が起こった直後に褒めたり,トークンを用いたりしてその行動を継続することができるようにする。修正を求める場合には否定的な言い方を避け,「こうすればよくなる」といった具体的な代替行動を示し行動を修正する。 2つのフィードバックを児童生徒の実態に合わせて組み合わせて用い,行動を起こす前にどうすればよいか手がかりを教えたり(プロンプト),理想的な行動を細分化し,易しいものから順に習得させたり(シェーピング)することで望ましい行動を増やしたり,望ましくない行動を減らしたり

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