001総教C030705H29最終稿(馬場)
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図1-2 ソーシャルスキルとライフスキルの発達のイメージ ソーシャルスキルの獲得は乳幼児期から始まり,児童期には学校生活という集団生活を経験しながら,青年期以降も続いていく。中でも児童期は,自分と他者の視点が別物であるということを認識できるようになり,対人関係の能力も必要となる時期で,乳幼児期よりも高度なソーシャルスキルの獲得が必要となる。(7)その一方で自立した社会生活に必要となるライフスキルの獲得も開始しなければならない。ライフスキルを円滑に獲得していくためにはソーシャルスキルを獲得している必要があるので,全ての児童が児童期に必要なソーシャルスキルを段階的に身に付けることは,非常に重要である。 よってその時の行動が肯定され,次回以降も好ましい行動が促される。しかし,失敗した経験を基に行動を修正するには,つらさや気まずさといった不快な感情を繰り返したくないという思いや,自己の行動を振り返り,何がまずかったのか,他にどのような方法があったのかなどを考えるために自己の行動を客観視する必要がある。 本研究では,これらを踏まえ,ソーシャルスキルを自己の感情や認知を調節し,人との関わりや日常生活の中で適切な行動をとる能力,SSTをこの能力を育成するための指導法としてとらえる。 (2)ソーシャルスキルの必要性 (ア)ソーシャルスキルとライフスキル ソーシャルスキルが,様々な生活場面における経験を通して獲得されるものであることは先に述べた。ここでは学校での集団生活場面に焦点を当て,ライフスキルの円滑な獲得という視点から見たソーシャルスキルの獲得の必要性について述べる。 図1-2はソーシャルスキルとライフスキルの発達のイメージを筆者がまとめたものである。 小学校 総合育成支援教育 4 LD等支援を必要とする児童生徒においては,認知面や行動面,感覚面などの発達に偏りがあり,単に学校生活や家庭生活を送るだけでは好ましいソーシャルスキルを獲得できず,スムーズな対人関係を築くことが難しい場合がある。そのため,日常場面での対人関係や,その児童生徒自身の発達にも悪影響が出ることがあるが,その発達の偏りは周囲から理解されにくく,性格やし付けの問題などと混同されることも多い。また,適切な支援やサポートが行われない場合は,感情や行動を自分でコントロールできなくなったり,学習や活動に意欲をもてなくなったりすることも見受けられる。つまり,適切なサポートを受け,所属する集団や環境に求められるソーシャルスキルを身に付けることができないと,現在の学業不振や不適応の原因となるだけでなく,生涯にわたって社会への不適応や心理的不調の原因となりうるのである。 また,ソーシャルスキルを獲得する過程で,本来は望ましくない行動であるのに見逃された,頑張って取り組んだのに評価されなかったといった経験により,誤ったスキルを学習してしまうことがある。多くの場合はその後の経験の中で正しく修正されていくが,機会に恵まれず誤ったスキルが定着してしまうと,対人関係の中での失敗などにつながり,結果的に他者と関わる機会を減らすこととなる。 これらのことから,児童生徒の過ごす通常学級や家庭,LD等通級指導教室において,ソーシャルスキルの向上を目指し,それぞれの児童生徒の実態に合わせたSSTを行うことは,ライフスキル獲得という面からみて重要であるといえる。 (イ)ソーシャルスキルとストレス ここでは,ストレスの軽減や解消のためのソーシャルスキルの必要性について述べる。 表1-2はソーシャルスキルとストレスについての主要な研究と論の変遷について筆者がまとめたものである。 表1-2 ソーシャルスキルとストレスについての研究の変遷アッシャーとハイメルの示唆をはじめ,ソーシ

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