小学校 総合育成支援教育 2 け止められるかを推測することも苦手なことが多い」(2)ため,集団の中で周囲からの評価が低く固定化されてしまい,それによって集団への不適応を起こすことがある。また,周囲からの低い評価によって自尊感情が損なわれると孤独感や劣等感が強くなり,その後の発育にも影響することがある。これらのことを踏まえ,それぞれの学校・園ではLD等支援を必要とする児童生徒への支援を進めてきている。 平成24年の文部科学省による調査(3)によれば,小中学校に在籍するLD等支援を必要とする児童生徒の割合は6.5%と推定されている。30人学級であれば1人~2人が在籍している計算となる。 表1-1は,同調査の「校内委員会において支援が必要と判断された児童生徒の支援」に関わる質問とその結果である。 表1-1 校内支援の状況校内委員会において支援が必要とされた児童生徒のうち90%以上が校内で何らかの支援を受けていることが分かる。 具体的な支援の方法としては特別支援教育支援員の配置や宿題の工夫,個別の学習課題の設定などの授業時間内外の支援であるが,加えてLD等通級指導教室での指導も支援の1つとして重要である。一人一人の児童生徒に合わせた支援を行うことで,困りを解消したり,うまくいった経験を通して自信を付けたりすることにつなげられているのである。 このように,困りを抱える児童生徒に対する支援は学級担任だけではなく,学校体制や教育委員会による人員配置によって充実が図られてきている。さらに,児童生徒の障害の特性の理解やその指導に関わる高い専門性をもった指導者の養成など,指導体制等の人的環境も充実してきている。 (2)LD等通級指導教室の全国的な傾向 平成18年3月,学校教育法施行規則の一部改正により,LD等支援を必要とする児童生徒が,新たに通級による指導の対象となった。その後,全第1節 困りを抱える児童生徒 (1)学校での支援の取組 活発な子や朗らかな子,恥かしがり屋にイタズラっ子,教室の中にはたくさんの個性があふれている。ときには個性がぶつかり合ってトラブルになったり,授業が中断したりしてしまい指導者が困ることもあるが,「友達と楽しく遊びたいな」「どうやったら許してもらえるのかな」「明日は忘れ物したくないな」と,困りを一番に感じているのは児童生徒たちではないだろうか。 学校は,各教科等で児童生徒の様々な力を育むことだけではなく,多様な個性をもつ児童生徒が集団で過ごすことを生かして,一人一人の社会性を高めることについても責を担っている。児童生徒は,様々なトラブルや葛藤,成功や失敗といった出来事を経験する中で,お互いに気持ちのよい振る舞いや集団での活動の仕方といった社会的行動を少しずつ学んでいくのである。社会性の向上に関わるこのような出来事は,各教科等の授業中にも,発言をするために挙手をして指名されるのを待つ,場面に合わせた言葉づかいをする,勝手に席を離れずに話を聞く,といった社会的行動に結び付く学びが日常的に行われている。授業中,児童生徒はその授業で求められる振る舞いを暗黙のルールとして理解し,以後の生活の中に反映させていくのである。 そう考えると,学校では全ての教育活動や環境を通して,児童生徒の社会化を促進する場でもあるといえる。遊びの場面で見られる児童生徒同士の話し合いや,これまでの経験に即した一定のルールの設定,そのルールの範囲内で遊ぶ姿などはそれぞれの児童生徒の社会性の集大成と言っても過言ではない。 しかし一方で,日々の学習や活動の中では自然に社会性を身に付けることができず,困りを抱えている児童生徒もいる。このような困りは児童生徒の家族構成やこれまでの生育の環境,本人の性格や周りの集団との相性などによって,どの児童生徒にも起こりうるものであるが, LD等支援を必要とする児童生徒の場合は,より一層の困りを抱えていることも多い。 LD等支援を必要とする児童生徒は「相手の意図や感情を理解し,それに対して適切な対応を取ることが難しく,自分の行動が相手にどのように受第1章 児童生徒のソーシャルスキルを 高めるために
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