001総教C030705H29最終稿(馬場)
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回答は集団指導を実施している18校のLD等通級指導教室担当者によるものであり,重複する内容については省いている。これらの回答から集団指導の実施における3つの課題が見えてきた。 1つ目は集団編成に関わる課題である。ここでは,児童それぞれのもつ能力をどのように組み合わせるのかという児童の力に依存する課題と,複数の学級から児童を通級させる時,どのように在籍学級との時間調整を行うのか,という在籍学級のカリキュラムに依存する課題の2つが挙げられている。研究協力校における実践の中では,ここで挙げられているものの他に,学校行事や祝日による指導日の調整,集団指導した児童の連絡ファイルの運用の煩雑さ, 一度集団編成すると児童同士の相性が悪くても編成を解消しにくいといった様子が見られた。 2つ目は指導の困難さに関わる課題である。ここでは,授業時間の確保や指導内容の編成,別々の課題をもった児童への指導,児童同士の相互性から生まれるやり取りのコントロールなどに課題があることが分かる。研究実践の中でもそれぞれの児童の課題の把握や活動のマネジメントに苦心したのは前述の通りである。 3つ目は指導環境に関わるものである。LD等通級指導教室での指導の対象児童数や学校規模によっても異なるが,学校によっては教室が手狭となっており,物理的に集団指導を行うことができないLD等通級指導教室もあることが分かる。 これらはいずれも,既に困りを抱える児童に対して集団指導を実施しているLD等通級指導教室担当者による回答である。しかし,現在集団指導を実施していないLD等通級指導教室担当者も集団を編成するにあたって同じような課題を想定し,集小学校 総合育成支援教育 29 団指導の開始に慎重にならざるを得ない部分があるのではないだろうか。 ここまでに述べてきたように,ソーシャルスキルを学び,学んだスキルを般化する上では集団指導における児童同士のモデリングやフィードバックなどのやり取りは非常に効果的なものである。 そこで,これらの課題のほとんどを克服できると思われる今回の研究協力校での取組を,LD等通級指導教室におけるより効果的なSSTの指導の方法として提案する。 図4-7は個別指導を行っている児童2名の指導時間を一部統合した指導を例示したものである。 指導時間の連続している児童2名の個別指導終末部分と開始部分を統合し,その時間を集団指導に充てるというものである。この集団指導の時間をSSTのリハーサルを行う時間として位置付ける。 これにより児童は個別指導の中で学んだスキルをより日常生活に近い形で体験することができ,個別指導だけでは成しえない児童同士のフィードバックも行うことができる。また,指導者としても児童がどのように他の児童と関わるのか,児童同士の関係の中で指導したソーシャルスキルをどのように使用するのかを確認することができる。さらに,児童Aと児童Bが連続して通級指導を受ける場合,本来であれば45分×2=90分の指導時間が必要になるが,指導時間を重ねることでそれぞれの児童の指導時間45分を確保したまま10分の余剰時間が生まれることも大きな特徴である。余剰時間をさらなる指導の充実に充てることもできるし,授業の遅延などによる児童の来室の遅れなどにも対応しやすい。また,先に挙げた集団編成や指導の困難さといった集団指導に関わる課題のいくつかもこの時間設定により解消されるであろう。 図4-7 一部を統合した集団指導

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