)64()54()44()34()24()14()04()93()83()73()63()53()43()33()23( 3210 ここでは二者ともに,ほぼ全ての領域において点数が増加しており,ターゲットスキルの設定方法や学級,家庭との連携に関わる取組,ストレスに関わる指導といった本研究での取組の効果が概ね認められたといえる。点数の変化の幅に注目すると,LD等通級指導教室担当者による評価の変化の幅が,学級担任よりも大きい。これは,ターゲットスキルを基にスモールステップを設定し,指導を進める中で,児童の小さな変化を詳細に見とることができたためであると考えられる。 学級担任によるチェックでは,LD等通級指導教室担当者によるチェックほど大きな変化ではないが,多くの項目で素点が増加している。学級担任によるチェック内容が変化するということは,担任が児童の変容をしっかりととらえられている証拠であり,児童が学んだスキルを学級で使用することができているという証拠でもある。ここではもちろん,児童が取り組んでいることに目を向け,保護者とも連携を取りながら児童にとって良いフィードバックや支援が行われている。そう考えると,やはり児童のLD等通級指導教室以外での周囲の保護者や教職員による声掛けは非常に大きな効果をもつと考えることができる。 しかし一方で,この学級担任とLD等通級指導教室担当者による素点の差は,児童が,LD等通級指導教室での指導の中で使うことができるようになったスキルを,在籍学級で同じように使用できていないことの表れととらえることもできる。その理由としては学級の集団に臆してスキル使用できなかった,スキル使用できていたけれども児童自身が気付いていなかったなど複数考えられるが,それも踏まえて二者の評価の差が埋まるような取組について検証を進めることが必要であろう。 また,a児及びg児のコミュニケーションに関わる領域の点数は指導後に減少している。 図4-1はLD等通級指導教室担当者によるa児のコミュニケーション領域の点数の変化を示したものである。 小学校 総合育成支援教育 23 図4-1 a児のコミュニケーション領域の変化 これを見ると「話し合い」に含まれる3つの項目についての数値がそれぞれ1ずつ増加している。同時に「聞く」「話す」「アサーション」に含まれる6つの項目の数値は1ずつ減少している。この増減がコミュニケーションスキル領域総計のマイナス3という点数減少につながっていることが分かる。ここで注目すべきは,数値が3から2に減少した6つの項目の変化の仕方である。なぜこのように変化をしたのか,どのような要因により数値が減少したのかを検証する必要がある。 4件法で行った今回の評価は「0:当てはまらない」「1:あまり当てはまらない」「2:やや当てはまる」「3:当てはまる」という選択肢が当てられており,3及び2はどちらも「当てはまる」ことを示している。 児童の力はどんどん積み重なり上昇し続けるものと考えれば,点数は常に上昇してしかるべきである。しかし,この3から2という点数の変化は,指導を進める中で児童の力が伸長し,さらに上のステップを見据えた時に新しい課題が見えてきている状態によるものとも考えられる。これは,指導を進める中で指導者の求める児童の姿がより高度なものに変化している結果と言い替えることができるのではないだろうか。 例えば「あいさつをすることができる」というスキルをチェックする際,相手からあいさつをされた時に返事をすることで「3:当てはまる」を選択したとする。この時点で「当てはまる」を選択することは妥当なことである。しかし,指導を進めていくとこの視点は変化する。指導の中で児童が力を付けてくると,「あいさつをできる」という表現から指導者が思い浮かべる児童の姿が「相手の目を見て返答する」「自分からあいさつをする」など,より高度なものになっていくのである。そしてそこを新たな起点として,指導者はより高度な力の育成を目指すのではないだろうか。そう考聞く 話す 主張 第1回 第2回 話し合い
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