後のスキル使用回数をミッションカードにより調査したものである。 例えばe児のスキルAは「相手の答えに対して反応する」というものである。ここでは指導後一週間で3回使用,二週間でさらに3回使用したことが分かる。また,スキルBは「友達が失敗したときに励ましたりなぐさめたりする」というものである。指導後1週間では在籍学級で使用することができなかったが,それ以降は4回,2回と使用回数が伸びている様子が見て取れる。同様にf児,g児,h児のグラフを見ると,かかる時間やスキル使用回数に違いはあるが,どの児童も学級でスキルを使用できていることがわかる。1週目のスキルA,3週目のスキルBなど,SST実施時,既に複数回使用しているのはSSTのリハーサルの段階で,一緒に学ぶ友達やLD等通級指導教室担当者に対してスキルを用いることができたためである。 ミッションカードへの記録はあくまで児童本人によるものであるため,スキル使用をしたけれども記録することを忘れたり,スキル使用したこと自体に気付かなかったりすることが想定された。そのため,LD等通級指導教室担当者による在籍学級参観時の児童観察や学級担任,保護者との連携の中から見えた児童のスキル使用についても可能な限りの指導の中で想起させ,その場で記録した。 取組の中で,学級担任からは「カードに書かれていることを子どもと確認しながら進め,スキルを意識しながら活動ができた」という声が聞かれ,在籍学級での担任の支援のもとでスキル使用に向かうことができただけでなく,LD等通級指導教室で学習したことに対する担任自身の理解も深まる様子が見られた。また,保護者からも「家でも通級で教えていただいたことに頑張って取り組もうとしています」「(LD等通級指導教室で)教えてもらったことを家でも教えてくれました」という声が聞かれ,家庭で実際にスキルを使用し,それを保護者がしっかりと把握し,児童を励ます様子も見られた。 当初,このように学級や家庭との連携を強化することを目指し作成したミッションカードであったが,この目的以上に,在籍学級や家庭でのサポートを受けることで児童がより主体的に取り組む様子が見られ,効果が感じられた。スキル使用の進捗を確認する際,折れたり破れたり,鉛筆の文字がかすれたりしているミッションカードを得意げに筆箱から取り出す様子からは,何度もカードを出し入れし,学んだスキルの使用に取り組んだ小学校 総合育成支援教育 22 (25)同(15) p.138 児童の主体的な姿が見てとれた。 表4-1はそれぞれの児童の困りのあるソーシャルスキル領域について,指導前と指導後のソーシャルスキルチェック表での素点合計と,その増減を一覧にしたものである。 表4-1 ソーシャルスキルチェック表における素点合計の増減 第4章 研究の成果と課題 第1節 チェック表による変容の見とり ソーシャルスキルチェック表を用いたターゲットスキル設定やその変容の見とりは,ソーシャルスキルについての児童理解や評価を容易なものにし,今回の取組による成果を含め様々な場面で活用できる可能性があることが明らかになった。特にソーシャルスキルに困りを抱える児童については,その個別の指導計画へのデータの反映や,その後の変容の見とりを行うことで,児童の実態をさらに明確にとらえることができると考えられる。この節ではソーシャルスキルチェック表の使用により明らかとなった取組の成果と課題を3つの項に分けて述べる。 (1)教員による変容の見とり 指導者2名によるソーシャルスキルチェック表入力を集団行動,仲間関係,コミュニケーション,セルフコントロールの4つのソーシャルスキル領域全てで行い,実態把握の際に行ったソーシャルスキルチェック表での結果と比較し,指導前後の変容を見とった。指導後のチェックは,逆算化傾向や寛大化・厳格化傾向などを避けるためにSST指導前のチェック内容を参照せずに行っている。
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