図3-9 ミッションクリア賞状 童への問い直しや声掛けが行われ,それを受けて児童が,その時に学習した内容や場面を想起するのである。このような問い直しや声掛けは,学んだことを定着させるため非常に有効なことであり,LD等通級指導教室のように場所を違えて学習する場合には不可欠である。 しかし一方で,これは児童にとっては受動的な学びの方法であるということができる。言い換えれば,問い直しや声掛けをしてくれる他者がいなければ成立しないのである。同時に,どれだけ他者が連絡を密に取り合い児童のことを知っていても,それが児童に伝わらなければ児童の学習効果は減退するし,意欲も向上しないのである。 この点に注目し,学級担任や保護者がより頻繁に児童に声掛けをできるように,また,より具体的に声を掛けやすくなるような工夫をした。 (1)ミッションカード 毎回のSSTの指導の後に,学んだスキルを在籍学級や家庭で使用する,という課題を設定することで,学級や家庭との連携を強化することと学習場面と日常場面のスキル使用に連続性が生まれることを目指し,カード型補助教材を作成した。カードの名称は児童にとってなじみがあり,楽しみながら取り組むことができると思われる,ミッションカードとした。 ターゲットスキルの設定と同様に,意欲的に取り組むことができるように児童自身がその大きさや持ち運び方を選択することとした。 図3-8は実際に使ったミッションカードである。LD等通級指導教室でのSST後,そこで学んだスキルを日常場面で使用することを,ミッションという形で提示している。ミッションの枠に入る言葉は「相手に呼びかけてから話す」「聞かれたことについて答える」といったスモールステップのス図3-8 ミッションカード 小学校 総合育成支援教育 21 図3-10 ミッションカードに見るスキル使用回数 このグラフは4人組で集団指導を受ける児童のものである。A~Dのスキルに関わるSSTを行い,そのキルのことである。 カードの大きさは4種用意したが,対象児童8名全員が7㎝×10㎝のものを選択し,普段使用している筆箱に入れて保管,活用することを決めた。実施したSSTでの児童のスモールステップに合わせてこのミッションカードを作成し,在籍学級や家庭でスキルを使用したときに記録していくこととした。 スキルの使用場所を明らかにするために「教室で」「おうちで」の2つの項目を作成し,それぞれに記録する形をとった。翌週の通級指導までの期間,カードを使ってスキル使用を目指し,翌週の指導の際,その進捗を確認し,どのような場面でスキルを使うことができたのか,その時に思った通りになったのか,相手の反応はどうであったかということについて振り返りを行った。 図3-9はミションカードでのスキルの使用の目標達成時に発行したミッションクリア賞状である。 ミッションの内容にもよるが,概ね両項目4回以上使用することができれば合格とし,賞状を発行することで,スキル使用の意欲喚起と達成感を味わわせることを意図した。 (2)ミッションカードの取組状況 第3時よりミッションカードによる取組を開始した。 図3-10はミッションカードの項目「教室で」におけるスキル使用回数をグラフ化したものである。
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