このゲームは,児童が日常生活でよく経験すると思われる合計50の場面を交互にリフレーミングしていくものである。 小学校 総合育成支援教育 20 充実させることが必要であると考える。 (4)ストレスマネジメント LD等通級指導教室で学んだソーシャルスキルを在籍学級や家庭などの日常生活場面で使用する際タイミングや方法など,そのスキルの使い方が正しいにも関わらず,好ましい結果にならないこと がある。例えば,LD等通級指導教室で「人のものを借りるときは事前に相手に断わってからにする」というソーシャルスキルについて学んだとする。在籍学級に戻り,思い切って在籍学級の隣の席の児童に,「消しゴムを忘れてしまったから,少しの間だけ貸して。」とスキル使用したとき,果たして毎回消しゴムを借りることができるだろうか。 多くの場合,隣の席の児童は「いいよ。」と快い返事を返してくれるだろうが,まさに自分が消しゴムを使おうとしているタイミングであったり,何度も同じお願いをされ続け辟易していたりする場合は「だめ。」「いや。」と断られてしまうこともあるだろう。 このように,スキルを的確に使用したにもかかわらず失敗してしまった時,児童がそのスキルの使用を止めてしまったり,SSTで学ぶことの効果に意味を見いだせなくなってしまったりすることがある。もちろん,「消しゴムを貸して」という声が相手にしっかりと届いていたか,使い終わったらすぐに返却したか,返却する際にお礼を言うことができたかなど使用した場面での児童の振る舞いや,指導したSSTに不備がなかったかどうかを検証する必要はある。しかし,困りを抱える児童生徒にとっては, 一度の失敗がそのスキルの使用を止めてしまう契機となったり,SSTを受ける意欲の消滅の原因になったりすることもある。 そこで,失敗した時にどうすればよいのかということも含め,その場面に合わせて対処できるように対象児童8名中,6名にリフレーミングに関わるSSTを行い,スキル使用時の失敗体験によるリスク軽減を図った。リフレーミングとは物事を別の視点で見て,肯定的に言い替えをすることである。「仲良しの友達が引越ししたから,さみしい」「大勢の前で作文を読まなくてはならない,緊張する」などの仮想場面とその時の感情を,「きっといつかまた会えるから大丈夫」,「みんなも緊張しているはず,僕だけじゃない。」などとリフレーミングすることを通して自分の生活の中でも使えるかもしれないという思いを持たせることを目指した。 リフレーミングを指導する際には実際に児童自身が遭遇して困った場面や,指導者の経験を基に指導を進めることもできるが,今回は短時間でできる限り多くリフレーミングする経験を保障するためにゲーム型教材を作成した。 表3-3は作成した「リフレーミングカードゲーム」のカード例及びゲームルールである。 表3-3 リフレーミングカードゲーム 最終的にそれぞれがリフレーミングしたカードの枚数で勝敗を決めるが,ゲーム性を高めるために最後にくじを引き,特定のカードの点数が上昇するようにしている。 過去に実際に起こった場面や対象児童がこれから遭遇する可能性のある場面も,カードとして追加することが可能となっているため,それぞれの児童への汎用性が高い。 実際の指導の中では,自分のこれまでの経験と照らし合わせてカードに書かれた内容に共感したり,対戦相手のリフレーミングの内容にうなずきながら納得したりする児童の姿が見られた。さらに,相手のリフレーミング内容の可否を判定することを児童自身が行うことで「自分だったらこうする」「その場合はこうしてもいい」と自分でリフレーミングするのと同様の効果があるように感じられた。また,指導後には在籍学級の学級文庫の中からリフレーミングに関わる内容の本を見付けたり,周りの友だちをなぐさめたり励ましたりする時にリフレーミングを使ったりする様子も見られた。 第3節 ターゲットスキルの般化に向けて LD等通級指導教室と学級,家庭を行き来する情報の媒体は連絡帳や連絡ファイル,懇談会など様々なものがあるが,その多くはLD等通級指導教室担当者や担任,保護者といった児童を取り巻く大人によるものが中心である。そこでの情報を基に「今日はどんなことを勉強してきたの。」「運動会の練習をがんばっているらしいね。」といったような児
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