001総教C030705H29最終稿(馬場)
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明らかになった児童の困りの原因であると考えられるスキルだけでなく,すでに日常の生活場面で力を発揮することのできている習得済みのスキルを得意なこととして提示することで,児童自身のより具体的な自己理解を促し,苦手なスキル習得への意欲を喚起できるものと考えた。 さらに, SSTに主体的に参加することを意図して,苦手なこととして提示されたいくつかのスキルの中から,児童自身がターゲットスキルを選択するようにした。ここでは,指導者がチェック表での評価を基に選出したスキルを苦手なスキルとして提示しているため,指導者側の指導の意図からは外れることがない。これにより決定したターゲットスキルを基に,実際のSST指導の計画を行った。詳しくは次節で述べる。 第2節 SST指導の実際 (1)SST指導計画の作成 表3-1は実践で指導した内容と,それぞれの指導時の児童のスモールステップの主たる内容である。 表3-1 指導内容一覧 小学校 総合育成支援教育 17 図3-5 ターゲットスキル設定シートの一部 ここでは週に1度,1回あたり10分から20分ほどの指導時間で指導を重ねた。 ターゲットスキルの設定後,その克服に向けたSSTを計画するために,ターゲットスキルを基にスモールステップの指導目標の設定を行った。複数のスモールステップを順に獲得していく中で,上位項目であるターゲットスキルの獲得ができ,同時にそれぞれのスモールステップの指導で児童の成功体験を増やすことができると考えたためである。 例えば,「仲間と会話を続けることができる」というターゲットスキルであれば,相手の方を見て話を聞く,聞かれたことについて話すなどの,「人前で適切に発表やスピーチをできる」というものであれば,全員に聞こえる声で話す,原稿から顔を上げて話すなどのスモールステップを書き出し,児童にとって易しいと思われる順にSSTに組み込んだ。 当然ながら,指導の進捗によって指導すべき内容は変化するため,指導前に全ての指導計画を立てるという形ではなく,1つのスモールステップに関わる指導が終了するたびに続けて内容を計画した。毎回の児童の様子や,後述するミッションカードでの取組の結果を基に,事前に考えたスモールステップを順次SSTに組み込んでいくことで,最適と思われるタイミングでのソーシャルスキル指導を目指した。また,指導後の評価はその都度行うのではなく,全ての指導が終了してから行うこととした。 (2)指導の連続性 表3-1で挙げたいずれの事例においても,児童

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