図3-3 児童が理解できる言葉に読み替えた自己評価シート ここでは指導者用のソーシャルスキルチェック表と同様に4件法による回答を行うこととし,指導後の評価も同シートで行うこととした。指導者用のチェック表が全56項目であるのに対し,領域を限定する形で実施するこの自己評価シートの項目数は半分以下となり,指導時間や児童自身に負担がかかりにくいのではないかと考えた。 実際に児童が自己評価する際,質問文の意味を理解できなかったり,判断に迷ったりする場合はLD等通級指導教室担当者による支援を行うようにしていたが,実際に児童が自己評価する場面では,質問項目の意味理解でつまずくことはなく,取り組むことができていた。 ルスキルの2つの領域は概ね平均かそれ以上の力を有しているが,仲間関係スキルとコミュニケーションスキルの2つの領域には困りがあることが見て取れる。特にコミュニケ-ションスキルについては学級担任とLD等通級指導教室担当者がともに低い評価となっていることから主たる困りであるととらえることができる。これを踏まえ,より具体的に実態をとらえるために,後述する“素点シート”を用いた。 (2)児童の自己評価による実態把握 今回使用したソーシャルスキル尺度は,元来指導者用のものであり,質問項目も「視線を合わせて人と話すことができる」「憶することなく仲間に話しかけることができる」というように指導者目線のものとなっている。この中で一部の項目は平易とは言えないものであったため,対象児童の学年に合わせて「相手の 目を見て 人と話すことが できますか。」「ドキドキせずに 友だちに 話しかけることが できますか。」等,児童が理解できるように読み替えたものを提示して児童による自己評価を実施した。 図3-3は児童用の自己評価シートを一部抜き出したものである。 小学校 総合育成支援教育 16 (3)児童による決定 学級担任,LD等通級指導教室担当者の行ったソーシャルスキルチェックと,児童による自己評価を比較するために,“素点シート”を用いた。 図3-4は三者それぞれの評価の数値とそれを視覚的にとらえるための素点シート内のグラフである。 それぞれの質問項目に対して三者が「0:当てはまらない」から「3:当てはまる」までの4件から評価を行っており,大きな数字ほど得意,小さな数字ほど苦手であるととらえることができる。ここでは指導者間の差異だけでなく,指導者と児童の評価の差異も見とることができ,ターゲットスキル選定に向けた絞り込みを行うことができる。 例えばこの事例では,聞くことについては概ねできているが,話すことや主張することに困りが認められ,児童自身もその困りを自覚することができているといえる。これを踏まえ,話すことと主張することは能動的な活動,聞くことは受動的な活動,話し合いはその両者が組み合わさった活動であり,スキルの難度もその順で高くなると考えた。さらに,主張をするためには自らの思いや考えを表出することが大切であると考え,まずは話すことに関わるSSTに焦点を当て指導を開始することとした。 次頁図3-5は児童に提示したターゲットスキル設定シートである。学級担任,LD等通級指導教室担当者,児童の三者の評価を基にして得意なことと苦手なことの2つの側面を児童に提示し,児童自身が学ぶスキルを選択するためのものである。 図3-4 素点シートによる視覚的比較
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