図3-1 ターゲットスキルの設定方法 まず,電算化したソーシャルスキルチェック表を用い,児童の学級担任,LD等通級指導教室担当者の二者がそれぞれチェックした。その内容を基に作成された2種類のシートを用いて照らし合わせ,児童の困りのある領域を探る。 次に,困りのある領域のチェック項目を用いて,児童が自己評価を行う。ここでのチェック表は児童が理解できるように易しい言葉に読み替えたものを用いた。 最後に学級担任,LD等通級指導教室担当者,児童の三者によるチェック表による評価を照らし合わせ明らかとなった得意とするスキルと苦手とするスキルを児童に提示し,児童自身が改善,克服を図りたいスキルを選び,これをターゲットスキルとする。 チェック表を用いて評価を行う際,質問項目が単純なものであるために評価者によって項目の読み取り方が微妙に変わってくることや,評価対象今年度の研究では,LD等通級指導教室を設置している京都市立小学校2校に研究協力を依頼し,それぞれのLD等通級指導教室において指導実践を行った。このうちA校は個別指導によるSST,B校は集団指導によるSSTを実施しており,それぞれ2事例ずつ計4事例を研究対象とした。研究対象となる児童数はA校2名,B校6名であり,それぞれにターゲットスキルを設定し,具体的な指導計画を立てた。 この章では2章で述べた指導の流れに沿ってターゲットスキルの設定方法,SSTの計画及び具体的内容,連携に関わる方策について述べる。 第1節 ターゲットスキルの設定 児童に不足している力を明らかにし,どのような順序・方法で指導するのか,児童のその時の状態に合わせて設定する必要がある。焦点を当てて指導する事柄を念頭に置き,後述するような指導計画の中で繰り返し指導していくことを行った。 図3-1はターゲットスキル設定までの流れである。 小学校 総合育成支援教育 15 となる児童と評価者である担任の関係性や,直近に児童が見せた様子などによっても内容が変化しうるものであることに留意した。評価者の主観によって評価する尺度である以上,これらの制約がある点を排除することはできないが,三者でソーシャルスキルチェックを行うことにより,より具体的な状況を把握しやすくなると考えた。加えて,最終的に児童自身がターゲットスキルを選択し学習を計画することで,意欲的に学ぶことができるのではないかと考えた。 (1)教員による実態把握 児童の見せる姿が環境や周囲の大人の存在によって変化することを考慮し,児童の在籍する学級の担任とLD等通級指導教室担当者の二者が別々にチェックリストでの評価を行うこととした。共通して表れた課題をターゲットスキル設定の手掛かりとしたり,評価の差異を場面による児童の変化として読み取ったりすることができる。 図3-2は,ある対象児童の学級担任及びLD等通級指導教室担当者によるソーシャルスキルチェックの結果である。 この児童は集団行動スキル,セルフコントロー図3-2 二者によるソーシャルスキルチェックの結果 これはチェック表を基に算出された評価点シートの一部である。4つのソーシャルスキル領域について,学級担任とLD等通級指導教室担当者の評価を比較したり統合したりすることによって児童の主たる困りを探ることができる。評価点とは,“入力シート”に入力された数値を基に,それぞれの領域の力を1から15までの数値で表し,全体の平均値を10として同学年,同性集団の中で対象児童がどの位置にいるのかを示すものである。 10よりも大きいとその領域は平均以上の力があり,10よりも小さいと平均以下の力であるということがいえる。このことから評価点が10よりも低い領域は,児童にとって指導の必要な領域であると考えることができる。 第3章 指導の実践
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