001総教C030705H29最終稿(馬場)
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導内容の共有や指導後の児童の変容に関わる情報交換については,前述したように充足しているとは言いがたい現状がある。 また,家庭との連携においては毎回の指導内容を記した連絡ノートやファイルのやり取りの他に,活動中の写真や映像,成果物を用いた伝達や個人懇談会での話し合いの場の設定などが行われている。その中で家庭でも取り組んでほしいことや取り組んでもらえそうなことを伝え,児童が家庭に帰った時に褒められる場面設定を用意したり,学習した内容を共有したりするのである。場合によっては保護者との間に学級担任以上の信頼関係を築き,保護者のサポートも含めた取組を進め,それに伴って児童への指導効果が上がっている様子もみられる。 しかし,いくつかの課題も見られる。「LD等通級指導教室で指導したSSTを家庭とつなぐ際の課題と感じていること」について自由記述にて回答された調査を集計すると,学級集団の中と家庭での児童の様子が異なることで情報共有をするのが難しいという回答が複数見られた。また,LD等通級指導教室での指導に即効性を求められ,共に児童を育てていくような関係を築くことができない,家庭での児童の様子が分からないという回答も見られた。教員同士で共有している,学校の中で過ごす児童の様子をどのように家庭に伝え,また,家庭での様子をどのように把握するかというのが,家庭との連携では重要であると考えられる。 これらの課題を解決するために,児童を主体とした連携による情報共有を行う。 図2-11は筆者の考える児童を主体とした連携方法をイメージ化したものである。 図2-11 ホームワークを介した児童主体の情報共有 従来の大人が主体の連携とは別に,児童自身が情報発信者となれるような工夫を行う。 具体的には,毎回のSSTの指導の後に,学んだスキルを使用するという課題を設定し,児童が日常の場面でスキルの使用を試み(ホームワーク),学級担任や保護者がそれに対して称賛したりアド小学校 総合育成支援教育 13 バイスをしたりする,日常場面での取組を確立させることである。LD等通級指導教室でのSSTの指導だけでは実施することの難しいリハーサル,フィードバック,般化の3つのSST技法を,児童が課題に挑戦する形で在籍学級や家庭で実施するのである。大人同士の話し合いや連絡ファイル等の連携だけでは,大人がどのような場面で,どのように声を掛ければよいのかが具体的に伝わりにくいという課題については,従来の連携方法を用いつつ,児童がホームワークを行うという行為を介在させることで解消されると考える。 これによりスキルの般化を促すとともに,日常場面でのスキル使用の経験を通して結果的に自己肯定感を感じること,学級担任や保護者からの一層のサポートが得られると考えている。 (4)ストレスに関わる指導 「明日のテストはストレスだ」「最近寝不足でストレスがたまっている」というように,ストレスという言葉は日常場面でよく用いられるが,そこには2つの意味が混在している。1つは,「明日のテストはストレスだ」といった場合の,心身に負担となる出来事や状況(ストレッサー)という意味である。もう1つは「最近寝不足でストレスがたまっている」といった場合の,心身の不安定な状態(ストレス反応)という意味である。 図2-12はラザルスらの心理学的ストレスモデル(21)を一部改変したもので,ストレスの構造を表している。図2-12 ストレスの構造 暑さや怪我,対人トラブルなど,心身に負担となる出来事や状況(ストレッサー)を受け,それが自分に対してどれほど重要なことであるか,自分ができることは何かといったことを考え(認知的評価),ストレッサーに対処(コーピング)した結果,うまくいかなかった場合に心身が不安定になる(ストレス反応)ことを表している。戸ヶ崎

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