001総教C030705H29最終稿(馬場)
14/32

ただ,同尺度を用いたこれまでの研究を概観すると,単一もしくは少数のターゲットスキルの獲得状況を評価する際,算出される評価点の変化の幅が小さく,対象児童の変容を見とりにくい様子が見られた。また,全56の質問のうち,いくつかの項目は評価点の算出の際に参照されず,その項目をターゲットスキルとした場合,評価点に変化が表れない。 これらのことから,①評価点は,対象児童の長期的な変容や困りを抱える領域を把握するために用い,②各質問項目の素点の変遷によりターゲットスキルの変容を見とる,こととした。 図2-9は実際に用いるチェックリストである。 図2-9 ソーシャルスキルチェック表 複数児童にチェック表を用いる際の作業時間やデータ管理の煩雑さ,複数回使用した際の比較のしにくさの改善を図るために,本研究ではチェックリストを電算化した。ここではシートを3枚に分け,1枚のシートに数値入力または選択をすることで,2枚のシートに評価点と素点についてそれぞれ結果が表示されるようにした。期間をおいて複数回評価した際,その変容を明確にするために,入力された情報を基に算出された評価点及び素点の変遷をグラフで示すことで視覚化を図った。 SST後の評価には,指導前の評価者と同一人物によるチェックリスト入力を行い,その変容を見とる。そこで明らかとなる児童の状態の変化に合わせて,スキル維持のための追加指導を計画したり,その他ターゲットスキルの指導を設定したりすることで,ソーシャルスキルを般化,維持できるようにする。 また,このチェックリストにより行った実態把握は,日常的な児童の行動観察で行われることの多かった個別の指導計画を作成する際の資料としたり,その指導の進捗を図る材料の1つとして用いたりすることも可能であると考えている。 小学校 総合育成支援教育 12 図2-10在籍学級担任と情報交換をするために行っていること これによると話し合いや電話などを用いた直接的な情報交換や児童の在籍学級の参観,連絡ノート・ファイル,Eメールなどを用いた間接的な情報交換の数値が設置校,巡回校ともに高く,指導内容の共有や児童の実態把握などにつながる連携を行う上で役立っている様子が見受けられる。また,巡回校においては校内委員会,個別ケース会への参加や個別の指導計画の作成への参画などの割合は低くなっているが,間接的な情報交換は100%実施されているという点で連携方法に不足があるようには見えない。ただ,SSTについての指(3)学級,家庭との連携 ソーシャルスキルの日常生活への般化はLD等通級指導教室だけで成しえるものではなく,学級,家庭が重要な役割を担うことについて,前節で触れた。LD等通級指導教室での個別指導は児童が安心できる環境を整えやすく,指導内容も児童の実態に合わせたものであるため指導効果が高いと考えられる。しかしSSTに限っていえば,そこで学ぶ内容について知識として理解していても,実際に必要な場面で用いることができなければ意味がない。また,うまく日常場面でスキルを用いることができたとしても,それを見とることができなければ指導効果を測定することもできない。これらの不足を補完するために,学級,家庭との連携の充実を図る。 従来,LD等通級指導教室,学級,家庭の連携のために行う情報交換の主体者は,LD等通級指導教室に通級する児童を取り巻く大人たちであり,それぞれの場面での児童の様子や変容を,様々な方法を用いて共通理解してきた。 図2-10はLD等通級指導教室の担当者がどのような方法で学級担任との連携を図っているかについて,設置校と巡回校を別々に調査集計したものである。

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る