図2-6 SST指導に関する課題と在籍学級との連携 この分析法では回答データから抽出された単語の生起回数が多いほど,その単語が大きく図内に現れる。また,それぞれの単語が使用された際に共起した単語については線で結んで表示される。今回の分析では,両設問へは合計71の回答があり,そこで用いられた単語のうち,5回以上用いられたもののみを表示している。 一人の児童に複数の困りがある場合はそれも計上している。 主な困りは児童の指導目標に直結するものであり,ここではソーシャルスキルに関わる困りが突出していた。具体的には対人コミュニケーション,気持ちのコントロール,集団への参加などであるが,いずれも学級や家庭で生起することの多い困りであるため,進捗を確認しながらLD等通級指導教室での指導を進めるためにはそれぞれとの連携が不可欠であると考えられる。 図2-6は設問「LD等通級指導教室でのSST指導に関して課題と感じられること」と「指導したソーシャルスキルを在籍学級につなぐ際の課題」へのLD等通級指導教室担当者の自由記述による回答をデータ化し,統合したものを計量テキスト分析(19)により視覚化したものである。 「SST」「般化」「難しい」という単語が図内で特に大きく表示されており,周辺の単語からも児童が学級などの日常生活場面で学習したスキルを使えるようになる必要をLD等通級指導教室担当者が感じている様子を見て取ることができる。具体的には39件で同様の指摘があった。 このことより,SSTでの指導内容の日常生活場面への般化に課題を感じているLD等通級指導教室担当者が多いことが分かる。また,目標となるスキルを選定する際の児童のアセスメントの難しさや,在籍学級での担任の取組のばらつきの大きさ,市販されているSSTに関わる書籍で紹介されてい小学校 総合育成支援教育 10 る指導法は,そのまま児童に適用できないといった指摘も見られた。 第2節 実践の内容 (1)指導の全体像 SSTはソーシャルスキルの向上に資するプログラムとして様々な場で実施されているが,実際にトレーニングを行っても効果が見られないことがある。理由としては,そのSSTで用いた技法や指導順序が適当でない,対象児童の意欲が高まっていないなど様々なことが推測できるが,その中に「SSTでスキル向上を狙う項目(ターゲットスキル)が対象児童の実態に合っていない」というものがある。 児童にとって課題が難しすぎたり,易しすぎたりするものや,普段あまり使わないスキルの指導では効果が上がりにくいのはもちろんであるが,「最近授業中に席を立つことが多い」「喧嘩した後に謝れなかった」というような行動だけを切り取ったあいまいな実態把握にも注意を払う必要がある。これらを踏まえ,児童の実態把握と,それに伴うターゲットスキルの選定,SST実施後の効果測定を含めた包括的な指導を目指したい。 図2-7は本研究のSSTの流れである。以下,SSTの実施について,流れに沿って説明していく。 「ソーシャルスキルの測定」については様々な方法が提唱されているが,ここでは標準化された他者評価尺度を用いることとし,教育の場での使用を想定して評価者の負担を軽減できるように提示する。 「ターゲットスキルの設定」については,測定されたソーシャルスキルの中で対象児童が困りを図2-7 SST実施の流れ
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