図2-3 児童の障害種別 図2-4 指導終了について ガイド』(16)や読字・書字に困りを抱える児童生徒への指導の指針となる『読字・書字のつまずき把握と指導・評価実践事例集』(17),中高の連携協力を強化するための『LD等支援の必要な生徒への指導・支援ガイド』(18)などを作成し,児童生徒への校種を超えた支援の拡充を図ってきている。 その中で,特別支援学級や通級指導教室,通常学級での支援の充実が進んでいるが,全国的な傾向と同様にADHD,LD,自閉症,情緒障害の児童生徒の入級希望者は増加している。その中で課題となっているのが,一部のLD等通級指導教室設置校でみられる,入級を待つ児童生徒の存在である。 今年度の研究では,本市のLD等通級指導教室の状況を把握するために,困りを抱える児童生徒へのSSTに関わる全市LD等通級指導教室設置小学校61校の担当者を対象とした調査を行った。この調査では,在籍児童の指導やSSTを実施する上での工夫や課題に関わる設問を設けたアンケートを行い,61校中56校からの回答を得た。 図2-3は京都市のLD等通級指導教室に通う児童の障害種別のグラフ,図2-4はLD等通級指導教室での指導終了について示したグラフである。 調査への回答があったLD等通級指導教室に通う全児童746名の障害種別を見るとADHD,LD,自閉症,情緒障害の児童の占める割合は約87%となっており,前述の全国の割合(約60%)と比較しても非常に高い数値となっている。LD等通級指導教室への入級理由はそれぞれの発達障害の特性だけではなく,そこから派生した二次障害なども含まれるため一概には言えないが,ソーシャルスキルに関するつまずきをもちやすいADHD,LD,自閉症の児童生徒の数の増加は,LD等通級指導教室におけるSSTの需要の増加につながるものと考えることができる。 また,図2-4に示した指導終了についての調査では,第6学年での修了時を指標に,卒業までに小学校 総合育成支援教育 9 指導を終了した児童と,卒業時まで指導を継続した児童について集計した。ここでは卒業までに指導を終了した児童が約40%,卒業時まで指導を継続した児童が約60%という結果が得られた。同時に調査を行った,指導終了に関する課題についての自由記述による回答からは,指導終了をできない理由として,指導終了の判断の基準が不明瞭であるというものや,入級当初の課題は克服しても別の課題や困りが生起する,終了について保護者の了解が得られない,といったものが多く見られた。 本市ではLD等通級指導教室への入級時に,児童生徒の障害の状況に応じて指導目標の設定をし,その目標の達成を指導終了の基準としているが,この基準を全てのケースに適用するためには一層の指導の充実と,入級時の指導目標,指導終了についての確認が必要であるということが示唆されたといえる。さらに,同設問では,児童の指導目標が達成されているかどうかの評価を行うことが難しい,といった回答も複数見られた。これらは,読み書きや計算に困りを抱えている児童であれば教科の授業やテストを通してその変容を数値化して見とることができるが,ソーシャルスキルのように日常生活の中で生かされる力に困りを抱える児童についての評価は難しい,ということを意味していると考えられる。確かに,ソーシャルスキルに関わる困りがLD等通級指導教室への入級の理由であるとき,困りに関わる指導はLD等通級指導教室を中心に行われることとなり,そこで身に付けた力を発揮する場所は学級や家庭となる。この場合,指導を行う場所と評価を行う場所が異なるため,LD等通級指導教室の担当者が一人で評価を行うことには無理が生じる。このソーシャルスキルに関わる評価を学級や家庭で補完することは,LD等通級指導教室での指導を充実させ,児童に目標とする力を付け切るうえで重要である。 図2-5は,図2-4において対象となった児童の主な困りを集計したものである。 図2-5 京都市LD等通級指導教室 通級児童の主な困り
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