001総教C030705H28最終稿(高橋)
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心を磨く領域知恵を磨く領域(倫理)(情報安全)小学校教員も,子どもたちを取り巻く現状については,中学生以降の現状も知り,情報モラル教育を推進していく必要性が出てきている。 しかし,情報モラル教育は使用の危険を伝え,使わないようにすることを教えるだけではない。情報モラルを身につけさせることで,情報手段を適切に活用でき,互いによりよい関係作りができる子どもたちを育成していかねばならない。 (2)学校現場における「情報モラル教育」の指導の位置づけ 情報モラル教育については,「学校教育法」を始め,「小学校学習指導要領」「学習指導要領解説 道徳編」「教育振興基本計画」「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」にその指導が明記されている。 以下に示すのは,現行の小学校学習指導要領の情報活用能力に関する部分である。 学習指導要領には,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しむこと,具体的にコンピュータの文字入力など基本的な操作ができるようにとある。これに並べて,情報モラルを身につけることも示されている。学校教育法の平成19年の改訂で,4項に「情報」という言葉が加えられ,教育振興基本計画に地域・学校・家庭における情報モラル教育を推進することが盛り込まれたことを受けて,学習指導要領に示されるようになった。 以下に示すのは,現行の学習指導要領解説道徳編である。 「学習指導要領解説 道徳編」(平成20年6月告示) 「小学校学習指導要領」(平成20年3月告示 平成27年3月一部改正) 第1章 総則 第4,2 (9) 各教科の指導に当たっては,児童がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ,コンピュータで文字を入力するなどの基本的な操作や情報モラルを身に付け,適切に活用できるようにするための学習活動を充実するとともに,これらの情報手段に加え視聴覚教材や情報機器などの教材・教具の適切な活用を図ること 第5章 道徳の時間の指導 第4節,5情報モラルの問題に留意した指導 (1)情報モラルと道徳の内容 (2)情報モラルへの配慮と道徳の時間 (下線は筆者による)(12)(13) 学習指導要領解説道徳編からは,道徳の時間の指導に情報モラルの問題に留意した指導をしなければならないことがわかる。 道徳の時間で指導する以上,機器の使い方や危険回避の方法を知る技能的な内容ではなく,情報モラルの題材をいかして話し合いをすすめたりして,子どもたちが考えを深められるようにすることが求められている。 これらを受けて,文部科学省から小・中・高等学校の中で体系的に情報モラル教育を推進するために「情報モラル指導モデルカリキュラム」も示されている。 図1-8は,情報モラル教育の「2領域5分野」を表したものである。 図1-8からは,情報モラルの指導には心を磨く領域に,「情報社会の倫理」「法の理解と遵守」,知恵を磨く領域に「安全への知恵」「情報セキュリティ」の分野があることがわかる。そして,その四つの分野を土台に,公共的なネットワークの構築の分野があると,捉えられる。 筆者はこれまで,教員が「どんな教材があるか」「何の教科でするか」ということに悩む場面をよく見聞きしてきた。また,社会で起こっている事件から,授業内容が危険回避を教えることに傾倒しがちでもあることも見聞きしてきた。これらは,情報モラル教育への理解がまだまだ十分でない状況を表している。情報モラル教育をすすめるには,教材や教科の枠から入るのではなく,よりよい人間関係を構築するための教育として,授業を組み立てるということをしていかなければならない。 「教育の情報化に関する手引」(15)には,情報モラル教育はよりよいコミュニケーションや人と人との関係づくりのために,今後も変化を続けていく情報手段をいか に上手に賢く使っていくか,そのための判断力や心構えを身につけさせる教育であることをまず念頭に置くことが極めて重要であると述べられている。 図1-8 モデルカリキュラムの2領域5分野 (14)小学校 情報教育 6 情報社会の倫理法の理解と遵守公共的なネットワークの構築安全への知恵情報セキュリティ

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