09第1節「情報モラル」の必要性 (1)「情報化社会」と「教育の情報化」について 近年,我が国の情報化が急速に進んでいる。 図1-1は,総務省の平成9年以降のインターネットの利用者数及び人口普及率の推移を調査した結果を筆者がまとめたものである。図1-1からは,インターネットの普及率が,平成9年から平成26年までの十数年の間に,9.2%から82.8%までに急激に上がっていったことがわかる。このインターネットの普及を背景に,平成19年に登場したスマートフォンは,飛躍的に普及した。さらに,ゲーム機やタブレット型端末,音楽プレイヤーも,スマートフォンと同じように通信することで機能が向上し,その便利さから多くの人々が,日常的にそれらの機器を用いて生活するようになった。 現在は,私たちが通信機器の利用で自ずと発信しているデータを大量に蓄積したビッグデータの活用が,進められている。コンピュータは,大量のデータ処理能力が人より優れているため,その点をいかして,人が介しては処理できなかったようなことを見つけ出し,様々な分野に生かそうというものである。ビッグデータの活用のために, AIの開発もめざましい。 加えて,IoTとよばれる,様々なモノを互いにインターネットでつなぐシステムの活用も研究されている。システムがモノとモノから判断することで,人を介さずにことを進めていくというものである。近い将来,店舗での買い物は,誰が入店し,棚からどんな商品を持ち出したのかセンサー第1章 子どもたちの「情報モラル」を高めるために 13.49.2でわかるようになる。つまり,レジを通らずに手に取った商品をそのまま持ち出せば,代金が自動的に請求されるようになるといわれている。 このような情報化の進展は,私たちの生活や仕事,つまり生き方そのものの価値観を大きく変化させようとしている。それは,これまでの量産的な仕事を機械やコンピュータで自動化するという捉え方が,今後はモノの生産やサービス業が自動化になっていこうとしていることで,今までの人の生活や仕事の捉え方が大きく変容してしまうことになる。 次に,教育の情報化について考える。 以下に示すのは,文部科学省が論点整理を受けて,次期学習指導要領の基本となる考えをまとめたものである。 つまり,これからの社会では,膨大な情報をいかに活用していくかということを考えられる能力と,人と人とが協働的な工程を経てアイデアを生み出す,AIにはできないような能力が重要視されている。 また,学校教育全般を通して,情報活用能力を段階的に育成していかなければならない。このようなことから,情報化社会と教育の情報化は,密接に結びついて考えられている。 このような中で,文部科学省ではICT(情報通信技術)などを使いこなす技術の習得について,子 Ⅰ 2020年代の教育の情報化の目指すもの (前略) 2 次世代に求められる情報活用能力の育成 ○次期学習指導要領に向けた検討を行っている中央教育審議会教育課程企画特別部会「論点整理」(平成27年8月26日)(以下「論点整理」という。)においては,これからの子供たちには,「解き方があらかじめ定まった問題を効率的に解ける力を育むだけでは不十分」であり,「蓄積された知識を礎としながら,膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し,自ら問いを立ててその解決を目指し,他者と協働しながら新たな価値を生み出していくことが求められる」としている。 ○そして,情報や情報手段を主体的に選択し活用していくために必要な情報活用能力を,各学校段階を通じて体系的に育んでいくことの重要性が高まっている。また,急速に進化するICTなどの技術を使いこなす素養を全ての子供たちに育んでいくことの重要性が指摘されている。 (後略) 小学校 情報教育 2 (下線は筆者による) (3)10,0008,0006,0004,0002,000図1-1 インターネット利用者数及び人口普及率の推移(2)(人) 12,000n=11,653(平成9〜12),n=43,404(平成26)82.882.837.121.4(%) 1009080706050403020100(平成)26年末101112
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