001総教C030705H28最終稿(高橋)
29/32

第1節 情報モラル校内研修の成果と課題<研修スタイル> 情報モラル校内研修から授業を実践したことで,以下の成果が見られた。 1. STPDサイクルは,授業実践に効果的に結びついた。一つ目の成果は,STPDサイクルの思考を研修の流れに用いたことが,授業実施に効果的に結びついたことである。STPDサイクルの特徴は,その現場に携わっている人々が客観的に現状を分析し課題を持つこと,その人たちが課題に向かって計画を立て実践することで,直面している課題に対して,根本的な解決に向かうところである。PDCAサイクルの手法もよく用いられるが,PDCAサイクルとの大きな違いは,はじめに計画(Plan)を立たてないことである。小学校での情報モラル教育の現状を考えたときに,いきなり計画をすることが,授業へのハードルを高くすると感じたので,STPDサイクルの思考を用いた。このことが,前章までで述べたように授業に効果的に結びついた。 二つ目の成果は,教員同士で学び合う,主体的で協働的な研修は,情報モラル教育に関する指導の認識を深めることになった。以下に,校内研修の感想を一部示す。 ・私たちも含め,実際に考えたり体験したりすることでよくわかりました。子どもたちにもただ動画を見せるだけでなく,実感させながら学びを深めてほしいと思いました。教員自身が考えたり,体験したりして,実際に活動することは,情報モラル教育の認識が深まり,授業への具体的なイメージがつかみやすかった。そして,校内研修は学校全体で取り組む姿勢が共有された。 図4-1は,研究協力校での「この研修は,また使えそうですか」に対するアンケート結果である。 この研修は(体験のところを差し替えたり,省略したりするなどして)また使えそうですか (人) 第4章 実践研究の成果と今後の課題からのLD等通級指n=32 2. 教員同士で学び合う研修で,情報モラル教育に関する指導の認識を深めることができた。 ・実際に体験を通したうえでの研修は理解しやすく,指導の流れを考えることまでできて交流するところが良く,さらに深められたと思います。 ・大変活動的な研修で自ら考えるという点で,ためになったと思います。何よりも学校全体で取り組んでいこうとする意識が高まったのがありがたかったです。 図4-1 「この研修は,また使えそうですか」に対する アンケート結果 ・子どもたちの姿をイメージしながら,情報に関する授業を考えることができ,すぐにでも活用していける内 容で良かったです。 ・アンケートから実態を把握して,授業を考えていくことは,とても意味のあることだと感じました。 小学校 情報教育 27 図4-1から,情報モラル校内研修モデルが繰り返し使えると全員が思ったのは,この研修会は目の前の子どもたちをどうするのかと主体的に進め られ,話し合いをすることで協働的に進められたため,質が高まったからだと考えられる。 情報モラル教育では社会の変化によって表出する課題も変化する。その時の子どもたちに届きやすい授業に置き換えられるのは「学校の先生」である。だからこそ,必要な教員の学びに対して,実践力を伴った研修が必要であると考えている。 <事前の児童実態調査について> 小学校でのアンケート調査実施には,いくつか課題がある。一つ目は,低学年の学力の実態からすると,アンケートを正確にとるということが担任一人の体制では難しかったことである。全学年で同項目の調査にしたが,低学年では,18問のアンケートに答えるのに,20分〜40分かかり,時間を大幅にとるクラスもあった。また,低学年にとっては,状況が理解しにくい質問,例えば「インターネットで知り合った人に会ったことがありますか」という質問では,意味がわからず「会ったことがある」と,事実と違うことを回答してしまうことも姿も度々あり,アンケート文の読み取りは難しいこともあった。 二つ目は,高学年であっても,アンケート文に使われる語彙や読解力が一律でないことである。例えば,「複数回答可」という言葉は,先生による説明があっても,正しく回答できなかった。また,オンラインゲームの中だけの知り合いに,オンラインゲームで再度プレイするようなことを,「会ったことがある」という認識でいることもあった。アンケートという,子どもたちにとって不慣れなことは全校一定の条件になりにくいことがあった。 また,アンケートは,保護者啓発を兼ねて家庭で記入後に回収をすることも考えられる。しかし,それが困難な家庭も存在する。その場合は反対に,学校で学習をした内容を子どもたちが家庭に持ち帰ることが,保護者へ情報モラル教育を啓発する働きを担うと解くこともできる。 18項目の実態調査を実施することは,労力を必要とするが成果もあった。以下に,感想の一部を示す。

元のページ  ../index.html#29

このブックを見る