る。選択した教材の対象学年が,中学2年生〜高校3年生対象であったことから,6年生にも考えやすいように動画教材の使用の仕方について授業構成が工夫された。この教材は,三つのショートストーリーからなる。ストーリー1は,昔,友だちの悪口を投稿したものが,今になって他の人に見られたというもの,ストーリー2は,撮影禁止の場所で記念写真を撮影し,ブログに書き込んだというもの,ストーリー3は,他人の写真を無断で撮影し,公開したというものである。 既存の指導案では,三つの動画を一度に視聴して考えるという流れであったが,6年生の授業で使用することから,三つの動画を一度に見るとそれぞれの場面が理解しにくいと考えられたので,ストーリー1とストーリー2・3の間で動画を分けて見せることになった。まずは,ストーリー1で「友だちの悪口を投稿したこと」「昔の投稿内容が見られること」などから一度問題点を考えて,「一度投稿した内容は,他の人がダウンロードをしていたら完全に消すことはできない」という情報社会の特性を知り,情報モラルの視点を共有した。 授業の構成を工夫したことで,子どもたちが情報モラルの視点をもって,投稿者の責任を考え,正しい知識をもって適切に利用することの大切さを根拠として考えられる授業となっていた。 もう一つ,子どもたち一人一人がじっくり考えられるようにするために,ワークシートに記述する時間を十分に確保していた。 図3-14は,A校6年生の子どもたちが,ワークシートに記述をしている様子である。 図3-15は,A校6年生の子どもたちが,ワークシートの記述を基に,グループで交流をしている 様子である。 ワークシートに記述する時間を十分にとるこ とで,すぐに書き出すことの難しい子どもも, 板書に書き出された,ストーリー1で全体共有 した情報モラルの視点をよく見て,テレビの静止画像の登場人物の表情を見つめながら考えを進めたので,最後には一人一人がしっかり記述できていた。ねらいにせまるために,授業のどこに時間をかけることが適切かということが考えられていた。 発表時に,「グループの友だちの体験談ですが,○○くんはペットショップで,店員さんに(かわいいので)写真をとってよいですかと聞いたら,よいですよと言ってもらえたので写真を撮ったそうです。だから,相手にちゃんと確認をとったらよいのだと思います。」と言って,自分が聞いて感心したことから,この学習でのつながりを考えて発表している姿もあった。ICT機器の活用の知識の範囲が様々である子どもたちが互いに考えを深める場として有効であったと考えられた。 これらの手立てや工夫から,情報モラルの授業で思考を深めることができたのは,6年生の先生方が研修会で,子どもたちの実態から「自他の個人情報を第三者にもらさない」という指導内容に絞り込み,授業のねらいをしっかりもっていたことであると考えられる。 二つ目は,子どもたちの反応からわかることについて述べる。 図3-16は,A校6年生のワークシートである。 焦点化した指導内容・自他の個人情報を第三者に漏らさない」使用教材のねらい ・情報の記録性・公開動画視聴直後の記述「投稿するときにどのようなことを確認したらよかったか」 授業のふりかえりの記述「情報発信するときには、どんなことに 気を付けていきたいか」性の重大さグループでの話し合いは非常に活発であった。よく活用している子に質問したり,日常的に活用のない子がそれを聞いてさらに考えを述 べたりする姿からは,子どもたちは使用実態に関わらず,スマートフォンを介していても相手に対する思いやりの考えを持つことが大切であるという情報モラルの倫理的な部分を考えることができたということがわかった。 図3-14 6年生が,一人ずつワーク シートに記述する様子 図3-15 6年生の子どもたちが, 図3-16 6年生が記述したワークシート 小学校 情報教育 19 グループ交流をしている様子
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