図2-2 プレイ論と運動の機能的特性を基にした京都市ス 10 図2-1 発達段階を踏まえた指導内容の体系化 就学前を「遊びの中で体を動かす時期」,小学校低学年から中学年を「様々な動きを身に付ける時期」,小学校高学年から中学校を「多くの運動やスポーツを経験する時期」,中学校から高校卒業以降を「少なくとも一つ以上の運動やスポーツに親しむ時期」とした。 就学前は,体を動かす遊びが生活の一部となっている。例えば,集団遊びの一つであるしっぽとりの場面で,何度も何度も遊びを経験して,勝ち負けを味わう。すると,しっぽを取られないようにするためにはどうしたらいいだろう,友だちが取られないようにするにはどうしたらいいだろうなど,色々やってみたいことが出てくる。それを繰り返すことで,やがて,簡単な作戦を立てたり,自分たちなりのルールを決めたりすることもできるようになる。確かに遊んでいるのだが,生活において重要な知恵や感覚等を蓄積している。つまり,学びがあるといえる。この子どもたちの自ら遊ぶ姿は,小学校低学年での学習の基礎となるものであり,非常に重要である。そして,小学校低学年では,就学前に思う存分遊んだことを継続させながら,「様々な動きを身に付ける時期」という発達段階を考慮して,運動遊びの指導を行うべきである。この指導内容は,発達段階を踏まえて示されたものであるので,少々無理をしてでも指導の前倒しをする方がよいと考えるのは得策ではないと考えられる。高校卒業までを見通し,発達の時期に応じた運動やスポーツを,思う存分行うことが,生涯にわたって運動に親しむ子につながるのである。 右上図2-2は京都市教育委員会が発行している「平成27年度 京都市立小学校教育課程指導計画 京都市スタンダード 体育科」にある単元を,カイヨワのプレイ論と機能的特性による運動分類に基づいて,筆者なりに整理したものである。 低学年に配当されているボールけりあそび,水あそび,とびくらべなどは,パイディアの要素が強く,遊戯的な単元であるといえる。競争型,達成型,克服型などといった機能的特性に基づく運動分類で整理することは難しく,遊ぶことを通して,様々な動きを身に付けることを目指している。学年が上がるにつれ,ルドゥスの要素が強くなり,競争型,達成型,克服型といった特性に分類できる単元となっている。しかし,この特性分類は絶対的なものではなく,常に子どもからみた特性を大切にするがゆえに流動的なものであると考える。アゴンとしてのスポーツ,ミミクリーとしてのダンス,そして,スポーツやダンスよりもパイディアの要素が強いものを運動遊びとし,欲求を充足する遊びととらえた。一方,体つくり運動やジョギングなどは,遊びではなく,健康や体力向上を目的とする必要充足の運動である。必要充足の運動であるから正しく行うことだけを考え,楽しんではいけないということではなく,楽しさを求めながら,体の必要を充足することも考えられる。したがって,欲求充足の運動と必要充足の運動は重なり合うものとしてとらえることとした。 このように,京都市スタンダードをプレイ論や運動の機能的特性からとらえ直すと,発達段階に応じて系統的に単元が配列されていることがわかる。例えば,パスゲーム→ポートボール→バスケットボールという流れは,パイディア→ルドゥスというプレイ論が基になっていると考えられる。パスゲームは,スポーツとしてのバスケットボールとは違い,簡単なボール操作で楽しむことができるよう考えられたゲームである。大きな簡易ゴールを使用し,ボールの大きさや固さも,誰もが安心して操作できるようなものを選ぶことが多い。ルールは,バスケットボール本来のルールではなく,低学年児童でも理解できるような易しいもので.実態に応じて流動的なものとなっている。低タンダードの整理 小学校 体育科教育 6
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