001総教C030705H28最終稿(西田)
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(21) 北尾倫彦,山森光陽,鈴木秀幸,高橋健夫『観点別学習状況の評価規準と判定基準 小学校体育』図書文化社 2011.5 p.124 34 自身に自信がもてるようにする。つまり,児童の実態に応じて,励みの評価も行うべきなのである。指導者からの励みの評価が一人一人に届いているかを正確に確かめるのは困難であるが,毎時間の自己評価である程度は把握することは可能であるので,ぜひ実践してほしい。 (2)低学年における遊びの中の学びとは 「低学年における遊びの中の学びとは」という問いに対し,筆者は,以下のように提言する。 提言 低学年における遊びと学びの関係は,遊びと学びを分離してとらえるのではなく,遊び=学びの関係である。したがって,遊びは既に学びであり,夢中で遊ぶことこそが学びなのである。そして,夢中で遊ぶためのキーワードこそ,楽しさを味わうということなのである。 児童の「遊びたい」「勝ちたい」「できるようになりたい」という自発的な思いがスタートである。この思いは,誰からも強制されるものではない。場やルールの工夫や励みとなる評価から,この自発的な思いを導き出すのが教師の役割である。遊びを生活の一部としてきた就学前の時期を考慮し,夢中で遊ぶことを通して楽しみを味あわせることが必要である。夢中になって遊びの世界に入り込むためにも,「自由で」「自発的で」「ルールがある」といったホイジンガやカイヨワのプレイ論は欠かすことができない。更に,これからの変化の激しい激動の社会を生き抜くためには,教え込まれた学びではなく,自ら考え,自ら学びをしみ込ませていくことが必要であり,遊び=学びのスタイルは,今後可能性のある学習スタイルなのである。 実践を終えて 「遊ぶが勝ち」これは,オリンピック三大会連続で出場した陸上選手である為末大氏の著書のタイトルである。世界で活躍した一流選手の辿り着いた答えが,「遊ぶ」ということなのである。スポーツは遊びなのである。スポーツはしなくてはならないものではなく,スポーツは楽しく遊びながら勝敗を競ったり,記録に挑戦したりするのである。そう考えると,少し肩の荷が下りる。自分の好きなことをやりたいときにやればいいのである。遊び感覚で楽しさを味わうこともでき,自分の健康にもよい影響を与える。まさしく,遊ぶが勝ちなのである。生涯にわたって運動やスポーツに親しむという学習指導要領の目標は,生涯にわたって体を動かしながら遊び続けると言い換えることができるかもしれない。 以下は,研究協力員による事後アンケートの記述である。 研究協力員が,遊び=学びの授業に対して,肯定的な立場で記述していることがわかる。二年間研究を進めてきた筆者にとっては,嬉しさを実感する内容であった。 また,本研究では,仲間と協力して競い合う姿,自ら判断し準備や後片付けをする姿,体を夢中に動かして遊び,その遊びを通して,自ら誰かのために行動する姿や友だちを気遣う姿を何度も見た。更に,遊びで起こった様々な問題を自分たちで解決し,折り合いをつけながら生活していこうとする姿もあった。このような姿は,教育現場に勤める私たち教師にとって,非常に嬉しい姿である。このような今後の社会に必要な力をもつ児童に出会えたことを大変うれしく思うと共に,更なる成長に期待したい。 最後に,本研究の趣旨を理解し,実践授業やアンケートなどに熱心に取り組んで下さった研究協力員の先生をはじめ,京都市立桂東小学校や京都市立伏見板橋小学校の素晴らしい教職員の皆様に,心より感謝の意を表したい。研究協力校の児童が,体を動かし夢中に遊びながら,楽しく明るい生活を営んでいくことを強く願っている。 ・今までは,「○○をしなければならない」「みんな一斉に同じことをする」などの感覚があった。今回の実践には,安全性や指導しなければならないルールは確実に存在しながらも,子どもたちの主体性を大切にした自由な活動が大部分を占めていて,それがあったからこそ,子どもたちの興味関心が続き,自らめあてをもって楽しく学んでいた。(後略) ・全ての単元で驚かされることばかりでした。子どもたちの変容が手に取るようにわかりました。(中略)「もっとやりたい」「失敗しても大丈夫」など子どもたちが主体的に動く,子どもたちに自信がつく実践に目から鱗でした。とにかく「遊ぶ」ということが,キーワードになるんだと感じました。(後略) 小学校 体育科教育 30 おわりに

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