001総教C030705H28最終稿(西田)
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図4-7 励みの評価の受け取りと楽しさの推移 <励みの評価の受け取り状況> 関心・意欲・態度をうながす評価 「ナイス」「その調子」「いいよ」 「やったね」「OK」など (おおげさに)(笑顔で) 単元の初め→単元の終わり毎時間の児童の振り返りカードには,「先生に声を掛けてもらいましたか」という欄が設けてあり,「はい」と回答すれば,その中身を覚えている範囲で書くようにした。声を掛けてもらったかという問いに対して,単元を通して多少起伏はあるが,約50%の児童が「はい」と回答していた。指導者としては,常に全ての児童に声を掛けたつもりであったが,実際には,半数の児童の心にしか届いていなかったということである。この点では,低学年であるが故に,授業後には励みの評価を忘れているということも考えられる。また,逆に,夢中で遊んでいるからこそ,周りからの評価を受け取っていないとも考えられる。図4-7から判断すると,指導者が児童の励みとなるように願い,授業中に評価をしても,児童の心には届かないことが多いということである。 <児童が受け取った励みの評価の中身> とびばこあそびの単元では,「ナイス」「この調子だよ」「すごいね」といった関心・意欲に関する内容と同時に,「ふみきりで大きな音がしているね」「ピタッと着地できるといいよ」などという思考・技能に関する内容の評価を,毎時間,差をつけずに行った。単元前半については,関心・意欲・態度に関わる内容を多くの児童が受け取っていることがわかる。一方,思考・技能に関わる内容は,単元前半には児童の心に響いておらず,単元後半に少し受け取ることができるようになっていた。つまり,関心・意欲・態度に関わる励みの評価は,単元前半に児童の心に届きやすく,思考・技能に関わる励みの評価は,単元後半に児童の心に届きやすいということである。 <励みの評価の受け取りと楽しさとの関係> 4時間目に注目すると,励みの評価の受け取りが他の時間より少ない割合であることがわかる。それと同時に,楽しさの評価も他の時間に比べて少し低い評価となっていた。したがって,低学年にとって,指導者の励みとなる評価は,児童の楽しさの高まりに影響を及ぼしているということもいえるだろう。つまり,児童の心に届き,児童の励みとなるような評価を効果的に行うことができれば,楽しさを味わうことができるということである。 以上のことをふまえ,筆者は励みとなる評価を効果的に行うモデルを図4-8のようにまとめた。 学習の進め方やルールについて不安を抱えている単元の初めに,児童の関心・意欲・態度に関わる励みの評価を行うことで,児童は安心して学ぶことができる。できていないことを指摘する立場より児童の今ある力で楽しんでいる姿を肯定する立場で児童と接していく。この時点で,思考・技能に関わる励みの評価を行ったとしても,児童には届きにくいのである。単元の初めに指導者による励みの評価を受け,見通しをもち,安心して活動できるようになった児童は,自然と運動の特性に導かれて,自発的,自主的に活動していくと考えている。そして,「勝ちたい」「できるようになりたい」という思いをもった児童に,指導者は,思考・技能をうながす評価を行うことで,児童もその評価を受け取ることができ,結果として,楽しみながら,自分の思考や技能も高まっていくのではないだろうか。 しかし,中には,関心・意欲・態度に対する指導者からの励みの評価を過剰に求める子も存在するだろう。そのような児童に対しては,関心・意欲についての励みの評価の時間を多くとり,自分 「どうしたら (具体的に) (端的に) 「手は前に」 「おしりをあげて」 早く回れるだろう」 思考・技能をうながす評価 33 図4-8 励みとなる評価 効果的に行うモデル 小学校 体育科教育 29

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