ん」では,じゃんけんによって勝ち負けが決まる遊びも行った。あえてこのような形で遊んでいくことにより,児童は意欲的に取り組むことができた。そうすることで,学年が進むにつれて,その種目が本来もっている遊びの要素(運動の特性)を味わうことができるようになるのではないだろうか。低学年という保育園・幼稚園から入学間もない時期は,体を思いっきり動かす楽しさを味わうことが大切であり,そのためにも,大いに遊ぶことが必要なのである。 また,本実践では,京都市スタンダードにある「パスゲーム①」「パスゲーム②」ではなく,「パスアンドシュートゲーム」「ハンドシュートゲーム」という単元を新たに開発して実践した。理由としては以下の通りである。 以上のような実態を踏まえ,攻守の入り交じりではなく,的に当てると得点が入る「パスアンドシュートゲーム」を開発し,実践した。そして,攻守の入り交じりがある「ハンドシュートゲーム」へと続く流れを考えた。ボール操作に対して,苦手と感じている子が多いことを考慮せず,いきなり攻守が入り交じる形で進めると,得意な子だけが活躍するゲームとなってしまうだろう。そのような授業では,ある特定の児童しか楽しめないことになってしまう恐れがある。そうならないためにも,目の前の児童の実態把握を怠らず,子どもたちから見た特性を大切に授業を進めていくべきである。 ③指導したいことは,できるだけ児童の姿を基に指導すること~しみ込み型授業へ~ 例えば,マット遊びで,前転がりを身に付けさせたい授業を考えたとする。その指導を教え込み型としみ込み型とに分けて考えてみたい。まず,教え込み型の場合である。 続いて,しみ込み型の場合である。 ○パスゲームに必要なゴールが不足している ○パスゲームに対する経験が少ない ○ボールを操作することを苦手と感じている子が多い T :今日はみんなで前転がりをします。前転がりのやり方を説明するからよく聞いてね。まず,先生が見本を見せるよ。(示範)両手はパーに開いて,次に,おへそを見て回ります。頭のてっぺんを地面に付けるんじゃなくて,首のあたりが地面につくと回りやすいよ。最後は,足の裏で立てるといいですね。どう?できそう?じゃあ分かれて練習してみよう。できるようになったら教えてね。 小学校 体育科教育 27 31 ①児童の自由度を高めること 自由度が高いという意味は,児童の活動にある程度の幅ができるということである。例えば,A校第2学年で実践した「てつぼうあそび」やB校第1学年で実践した「マットあそび」「とびばこあそび」での,「これまでに遊んだ遊びの中で,自分がもっと楽しみたい遊びで遊ぼう」「工夫された場で楽しもう」という時間は,自分で遊びを選択でき,また,自分の思いによって遊びを変えていくことも自由に選択できる時間である。したがって,全ての児童が自由に自分の遊びたい遊びを遊べる状況となる。児童は,保育園や幼稚園において,自分の遊びたい遊びを自由に選び,夢中になって遊んできた経験を多く持っている。小学校低学年は入学して間もない段階であり,発達段階としては,保育園児や幼稚園児とさほど変わらない。したがって,幼稚園や保育園での遊びの経験を,体育の授業スタイルとして取り入れることが必要なのではないだろうか。そうすることで,児童の「遊んでみたい=学んでみたい」という思いが満たされるのである。 ②遊びの四要素を実態に応じて取り入れること ~子どもから見た特性を大切に~ 【競争・達成・克服】【運】【真似】【心地よさ】という遊びの四要素の中のどの要素が単元で取り上げる種目(運動)に含まれているかを明らかにする。その種目に含まれている遊びの要素を指導者が理解することが,教材研究となる。例えば,本来の鉄棒運動は達成・克服型の運動であり,自分の目標とする技ができるように練習して,その出来栄えを自分で感じることが楽しい運動とされている。そうであるので,他の要素をあえて取り入れることなく,授業を進めることも可能である。しかし,低学年の児童を想定したときにはどうだろう。そもそもできるようになりたい技自体を,自分で明確に持つことができるのかどうか。また,課題をもつことができたとして,その課題達成のために,自分で練習をするという思考過程をたどるのだろうか。筆者は,低学年であるからこそ,柔軟に対応すべきであると考えている。あえて,本来必要のない「運」や「真似」といった要素を取り入れ,より遊び感覚を強めることで,自然と鉄棒に対する意識も高まり,遊びながら学んでいくことが可能になる。実戦では,「てつぼうすごろく」を行い,サイコロの出目によって遊び方が左右される取組を行った。また,「ふりふりじゃんけ
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