001総教C030705H28最終稿(西田)
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の中で,楽しさを実感したのだと感じた。児童Cは,「じゃんけんで負けたけど楽しかった」と評価している。そもそも運に左右されるジャンケンは,競争の楽しみはない。勝つか負けるか運に左右されるから楽しいのであり,勝っても負けても楽しいのである。運という遊びの要素を味わい,楽しさを実感したのだといえる。児童Dは,できないことに対して「くやしい」としながらも,「くやしいけど楽しくなるのが遊びなんだ」と評価した。児童Dにとって,「スーパーツバメ」という遊びは,「できそうでもできない」遊びであり,それが「一番楽しかった」と感じている。このことから,「達成」の楽しさを十分に味わっていることがわかる。 また,以下は,実践協力をお願いした先生方を対象に行った事後アンケートにおける「楽しさを感じて運動をしていたか」に対する自由記述をまとめたものである。 筆者は,運動やスポーツにおける「楽しさ」とは,「勝つか負けるか」「成功するか失敗するか」が揺れ動く状況に置かれているときに感じることができるものであるととらえている。「勝つこと」「成功すること」だけが強調されがちであるが,運動やスポーツが楽しくて夢中になる瞬間は,「勝てるかな,負けるかな」「できるかな,できないかな」といった状況であり,「勝った」「できた」は,その過程にある一部分にすぎないのである。「失敗しても楽しい」は,遊びながら学んでいるからなのではないだろうか。また,スキル(技能)の高まりを感じたり,動きの工夫をしたりすることが楽しさに繋がっているという言葉からも,楽しさ○もともと運動することが好きな子たちが多かったのですが,苦手な子も「今日は体育がある。いっぱい遊ぶぞ」と意気込んでいる姿が多く見られました。失敗しても楽しいということが実感できていたようです。 ○パスアンドシュートゲームでは,運動が苦手な子でも地道に点を重ねればよいと安心でき,それが楽しさに繋がったと思います。 ○鉄棒遊びでは,どこまで飛べるのか,どこまでいけるのかなど,遊びを通してスキルを高められることに楽しさを感じているようでした。 ○ハンドシュートゲームでは,相手意識を持つことで,パスを工夫したり,励まし合って味方のミスをカバーしたりすることに楽しさを感じているようでした。 ○自由に遊ぶ場所が選べる形であったので,自分のやりたいことを確実にできる環境であった。そのことが楽しさに繋がっているようであった。 (波線は筆者による) 29 は,単に「気楽に」とか「愉快に」といった意味だけではないことがうかがえた。更に,自分で選択することができる環境で授業を行うことも,楽しさを味わう要因の一つであると言えそうだ。 (2)社会性や主体性の向上は見られたか 図4-4は,パスアンドシュートゲームにおける形成的授業評価の結果である。 図4-4 パスアンドシュートゲームにおける 単元が進むにつれて,全ての項目で徐々に評価を高めていったことがわかる。パスアンドシュートゲームは,全ての児童にとって,初めて経験するゲームであったので,ルールを理解することに時間がかかった。したがって,単元の初め,「学び方」の項目の評価は,「2.50」を下回るものであったと推測する。また,チームで得点を競う形であったため,同じチームの仲間を責めてしまう姿も見られた。しかし,単元が進むにつれて,ルールを理解し,仲間と協力しなければ多く得点をすることができないということも体感してきた。その結果,単元の最後には,全ての項目において「2.90以上の高い評価につながったのではないかと考えられる。図4-5は,単元後半におけるゲームを始め る前の児童の様子である。円陣を組み,みんなで協力して楽しもうとしている様子がうかがえる。単元前半には見られなかったこのような様子は,仲間と協調して取り組む姿勢の現れではないだろうか。パスアンドシュートゲームの楽しさを味わいながら,自然に, 子どもたちの社会性もしみ込んできたのだと推測している。 更に,事後アンケートからは,授業以外における児童の姿でも,主体性や社会性の変容が見られたことがわかった。以下は,実践協力をお願いし図4-5 円陣を組んで小学校 体育科教育 25 形成的授業評価の推移 いる様子

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