ジャンプアップチャレンジカードは,児童が日常的に体を動かして遊ぶきっかけを生み出すものとして活用できる。表面の遊びメニューと運動・健康メニューから自分のやってみたいものを選び,裏面にその番号を書いてゴールを目指していく。 メニューにある○○おにと名のつく遊びやドッジボールは,児童にとって一度は経験したことのある身近な遊びであろう。身近な遊びであるので,ルールを理解しており,児童だけで過ごすことの多い休み時間でも,児童同士で楽しむことができる。更に,メニューにはない遊びを児童が知ることができれば,より一層,意欲的に体を動かすことができるようになるのではないかと考えた。そこで,日本体育協会が開発した運動プログラム「アクティブチャイルドプログラム」を参考に,学校に遊びムーブメントを起こすため資料集「学校生活をenjoy!運動遊び大特集」(以下,「小冊子」という)を作成し配布した。図3-24は,小冊子の一部である。この小冊子は,「鬼遊び編」「リーダー 童自らが手に取って遊んだりすることができる。遊びに関する情報を手軽に得ることができる環境を整えることで,児童の遊び心が高まっていくと考えている。 一方,運動・健康メニューは,生涯スポーツに関わる項目であり,低学年児童よりも高学年児童を対象としたものである。遊ぶことで体力向上を目指すと同時に,高学年児童は,自分で自分の体と向き合い,自分の必要に応じて運動を行うことができるようになってくるのではないだろうか。例えば,「最近,夜遅くまで起きて,体調がすぐれが必要な遊び編」「クラス遊びに使える遊び編」「お手軽二人遊び編」「なわとび・ボール・ゴム編」「その他」に分けて遊びを紹介している。学級担任が児童に対して遊びを紹介したり,児 ないときもあるので,早寝早起きをしよう」「運動不足で健康ではなくなったら困るので,ちょっと走っておこう」など,それぞれの必要に応じてメニューが選べるようになっている。 ジャンプアップチャレンジカードや小冊子を,配布するだけでも,多くの児童にとって体を動かす機会や運動時間が増えるかもしれない。しかし,児童が日常的に運動をするようになるために,教師の意図的な手立てが必要となる。以下は,ジャンプアップチャレンジカードや遊びの小冊子の具体的な学級での活用例である。 E校第4学年の学級では,ジャンプアップチャレンジカードを配布した後,学級全ての児童が日常的に休み時間を使って運動遊びを楽しむようになった。しかし,何週間か経つと,児童の関心も徐々に薄れていき,運動が好きな子は外で遊び,そうでない子は中で遊ぶという配布前の様子に戻っていった。そこで,小冊子を紹介し,以前から行っていた係活動による全員遊びで楽しむ遊びを小冊子から選ぶように声を掛けた。すると,係の児童が主体的に学級遊びを計画していくようになった。係活動で活用した小冊子は,多くの児童が気軽に手に取ることができるものになり,学級全員遊びの日以外も,冊子にある遊びを楽しむ姿が増えてきた。このようなことをきっかけに,またジャンプアップチャレンジカードを使ってゴールを目指す児童が増えてきた。更に,再度児童の興味関心が薄れてきたと感じられたときに,「ジャンプアップチャレンジ週間」という期間を設け,児童の遊び心を高めていた。 児童の興味関心は,日々変化し,教師の願いを込めて行った取組も,長続きしないことが多い。事例3のように,一つの取組を,一つの手立てではなく,いくつかの手立てを試しながら,継続的に進めていくことで,児童が運動遊びを楽しむ姿につながっていく。また,児童が楽しく運動遊びを楽しむ姿と同時に,教師が楽しく遊ぶ姿もあった。夢中に遊んでいるときは,児童にとって,教師も遊び相手の一人なのである。共に遊び,喜びや楽しみを共有することで,「遊ぶことって楽しいな」という気持ちも高まっていくだろう。 ○終わりの会で,ジャンプアップチャレンジカードの内容を紹介する時間を設定し,学級児童に広げていく。 ○係活動での「学級全員遊び」の資料 ○重点的に外遊びを奨励するジャンプアップ週間という期間の設定 ○担任が積極的に外へ出て児童と関わりながら遊ぶ。 小学校 体育科教育 23 27 図3-24 学校生活をenjoy!運動遊び大特集 一部
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