平成28年7月,ランダムに抽出した京都市立小学校教諭を対象に「体育授業や体力向上の取組に関する調査」を行った。図3-18は,「子どもの体力向上に向けた取組を行っている」に対する回答結果である。「苦手な児童に対して」「学級として」 24 図3-17 視点を変えて観察している様子 何度も遊びを繰り返す中で,技能における学びの姿が見られる児童を指導者が意図的にピックアップして,実際に見本として全体に紹介した。そして,学びの姿のポイントを児童から発見させるようにする。例えば,「踏切板の音はどうなっているかな」や「お尻の高さはどうなっているかな」など具体的に見る視点を提示する。必要であれば,指導者が,あえて悪い見本を示し,比べて見せることも効果的であった。このように視点をあたえることで,「うまくできるコツ」を何となく掴むことができる。図3-17は,児童による横跳びの示範 は,示範する児童の尻に集中していることがわかる。視点を与えずに観察するだけでは,児童の心には,「上手だった」とだけしか残らないのでないだろうか。視点を明確にすることで,学びの姿に近づくのである。示範の観察後,コツがつかめた児童には,「スーパー横跳びだね」と価値づけをして,全体に広げた。しかし,示範観察でコツを共有し,すぐにできる児童もいれば,そうでない児童もいる。しかも,遊びの感覚で授業を行っているので,コツをつかめるように,何度も練習をさせることはしない。したがって,ステージ①の段階では,スーパー○○ができない児童も多いのである。ステージ①とステージ②を繰り返し行ってを観察している児童の様子である。上段は,「踏切板の音」という視点で観察している場面である。周りの児童の視線が,踏切板に集中していることがわかる。 「学年として」「学校として」全ての項目について,「4 そう思う」と肯定的に回答した割合は,いずれも20%を下回っていることがわかる。また,「2 ややそう思わな い」「1 そう思わない」と否定的に回答した割合が50%近くとなっており,取組が大きく広がっている訳ではない。学校の継続的な体力向上に向けての取組と新体力テストの数値には相関関係があり,継続的な取組を行っている学校の児童ほど,新体力テストの数値も高い。また,文部科学省の調査によると,一週間の総運動時間が多い児童ほど,図3-18 「子どもの体力向上に向けた取小学校 体育科教育 20 いる中で,学びの姿に近づいていくと考えている。 児童は,「自分なりの横跳び」を「スーパー横跳び」とするために,舞台の場で練習しているのではない。場に引き寄せられて,ステージ①で獲得した「自分なりの横跳び」という遊びで遊んでいるのである。すると,片足で踏切板を踏み込んでいた児童が両足で踏み込むことができるようになった。「強く踏み切る」という意味を遊びながら体にしみ込ませた児童は,自然と尻を高く上げたダイナミックな動きで踏切→着手→着地までを行うことができるようになった。「自分なりの横跳び」の児童が「スーパー横跳び」に近づいていくようになる。指導者は,その姿を見逃さず,ポイントを含めた声を掛け,価値づけていくようにする。「両足で踏切板を踏んでいるね」「お尻が上がっているね」「舞台だと思い切って遊べるね」などの教師の励みの声を聞いた児童は,益々上機嫌で舞台の場で楽しむ様子があった。 第2節 運動の日常化~学校に遊びムーブメントを次に,下段は,「尻の高さ」という視点で観察している場面である。周りの児童の視線 組を行っている」に対する回答結果 起こす~
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