ア ア <授業の実際 ステージ②に焦点を当てて> またぎ乗りどんジャンケン 跳び乗り 跳び下りなど 図3-16 踏切から着手までの動作比較 (上段 ステージ① 下段 ステージ②) 横長の場 予想される遊び 段差の場 予想される遊び 小学校 体育科教育 19 上段場面アから,踏切板の上まで助走をしていることがわかる。助走を踏切板の上まで行い,大きく踏み込むことができないため,上段場面イでは一度助走のスピードが落ちる。スピードが落ちた状態で,両足で踏切版を踏み込むという動作となり,上段場面ウでは,尻が高く上がっていない。つまり,助走がうまく生かされていないということである。助走が生かされず,踏切板を強く踏むことができないと,着手したときに,尻を高く上げることができなかったり,またぎ乗りの際の着手を遠い位置に行うことができなかったりする。 一方下段の児童は,ステージ②の舞台の場で跳び乗りを楽しんでいる。舞台の場は,跳び乗りや横跳びなどをして楽しむ児童が多くいた。舞台の下には,踏切板ではなく,六枚重ねたマットと三枚重ねたマットを置くようにした。下段場面アでは,助走を終え,マットの上に両足で乗ろうとしている。つまり,片足で体育館の床を踏み切っているのである。マットのかなり遠い位置から片足で踏み切っているので,ジャンプしているようになっていることがわかる。場面イでは,両足でマットを力強く踏み込み,スムーズに着手を行う準備をしている。上段場面イでは,スピードが落ち,一度停滞したように感じられたが,下段の場面イでは,踏切→着手までがスムーズに行えていた。このあと,この児童は,舞台の上に両足で着地しており,実際には,下段場面ウで見るより更に高い位置まで尻が上がっていた。 上段と下段の大きな違いは,場面アである。踏切板を踏み込む一歩前の動きが重要であり,この動きは「しっかり踏み切って跳びなさい」「強く踏み切りなさい」と口で指導するだけでは,苦手な児童には届きにくい。しかし,舞台の場で何度も繰り返し遊んでいる児童からは,下段場面アのように,体育館の地面を片足で踏み切り,ジャンプしながらマットに跳び乗るという動きが見られるようになった。マットを重ねている分,通常の踏切板よりも高さがあり,ジャンプして跳び乗らなければならない状況なのである。更に,舞台の場は,上に跳び乗った後に,足を滑らせて転落する危険もないので,安心して,楽しむことができた。舞台の下にマットを重ねて置くだけで,児童はいつもの場とは違う遊びの世界に引き寄せられ,何度も何度も舞台めがけて走っていた。六枚重ねた場ができると,三枚,最終的には,跳び箱七段相当の高さであるゼロ枚の場で挑戦し,成功する児童もいた。 23 まっていくことをねらっている。遊びながら自然と学びの姿が現れるような場の工夫が必要である。表3-8は,本単元ステージ②における場の工夫の例である。 表3-8 とびばこあそび ステージ② 場の工夫 例 舞台の場 予想される遊び 跳び乗り 横跳びなど 横跳び 踏み越し跳びなど 縦長の場 予想される遊び 低学年の「跳び箱を使った運動遊び」は,中学年以降の「跳び箱運動」へとつながる。この時期に,跳び箱を使った多くの遊びをすることが必要である。特に,「踏切」「着手」「着地」の三点は,跳び箱運動の基本的な動きであるので,低学年の時期にぜひ経験させておきたいと考えた。 図3-16は,踏切から着手までの動作の例をステージ①とステージ②で比較したものである。 イ ウ イ ウ
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