18 ・的を一つ倒せば1点,二つ倒せば3点 ・ボールを保持している人のボールを叩いてはいけない ・センターラインから,一度味方にパスを出してからゲームをスタートする。始めのパスは邪魔されない。 ・得点が入れば,センターラインから相手ボールで始める ・ボールを取られたら,センターラインよりも自陣へ戻る。センターラインよりも相手陣内でボールを取りに行くことはできない。(A) 図3-6 ステージ①で多く見られたチームの様子 ハンドシュートゲームは,パスアンドシュートゲームとは違い,攻守が入り交じる形のゲームである。苦手な児童にとっては,今攻めているときなのか,守らなければならないのかということを理解することが難しく,攻守の切り替えが課題になると予想した。そこでいくつかルールの工夫を行った。以下に示したものは,単元の初めに,児童に説明した内容である。 ここでは,下線Aについて詳しく述べる。下線Aには,攻守の切替えを明確にするという意図がある。筆者のこれまでの経験で,自陣でようやくボールを保持したが,うまくパスをつなぐことができず,自陣内ですぐにボールを奪われ,得点されるという場面をよく目にしてきた。また,攻守の切替えがうまくできにくい児童は,自分が攻めているのか守っているのかの状況を把握することが難しく,ボールを奪ったのにもかかわらず,相手陣内へ走ることなく,自陣で立ち止まってしまうこともあった。下線Aのルールを採用することで,一度ボールを奪ったら確実にセンターラインまでパスをつないで相手陣内を目指すことができる。つまり,「攻めている」ということを確実に意識してパスを行うことができる。反対に,一度ボールを奪われたら,全員自陣へ戻らなければならないので,確実に「守っている」ということを意識することができるのである。 図3-6は,単元前半,ステージ①で多く見られたチームの様子である。 小学校 体育科教育 14 図3-6は,パスができない状況に追い込まれている様子である。ボールを保持した児童Aに対して,パスをもらいたい児童B,児童Cが近づき,手を広げて待っている。しかし,相手チームの児童が迫っており,児童Aはパスをすることができない。一方,児童Bや児童Cは,自分がパスを受けたいという気持ちが強い状態なので,手を広げたまま動かないのである。この状態が長く続くと,ボール保持者はどうすることもできず,ボールを闇雲に上に投げてしまうことが多かった。 このようなステージ①での今ある力で楽しむ段階を経て,「どうすれば多く得点することができるのか」という段階へとつながっていく。このステージ①の段階を経ず,単元の初めから,教師が,「では,このように攻めるようにしましょう」「ではチームで練習してみよう」などという指導をするのは,児童が自ら競争を楽しむ姿を消してしまう恐れがある。 図3-7は,ステージ②において多く見られるようになった的の後ろに回り込んでパスを受けてシュートする様子である。 図3-7 的の後ろに回り込んでシュートを決める様子 ボール保持者の児童Aは,相手の頭上を通らせて的の後ろにいる児童Bにパスを出している。パスを受けた児童Bは,相手に邪魔されることなく,思い切ってシュートをすることができた。この動きC B A A A A B B B
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