001総教C030705H28最終稿(西田)
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(1)運動の生活化の重点 運動の生活化では,子どもたちが授業の中で,運動の楽しさを実感することをねらいとしている。今年度は,特に低学年に焦点をあてる。なぜなら,遊び=学びという指導と評価は,低学年の子どもたちの発達段階に最も即した形であるからである。運動の生活化の重点は次頁の通りである。 図2-4 運動生活を学校生活に取り入れる体力向上モデルある。このことから,多くの教員が,体育の授業において,社会性の育成を重視していることがわかる。 本来評価とは,子どもたちの励みとなるようなものでなければならない。できるようになったことを最終的に評価することと同時に,学習過程において,「この調子でやっていけばいいんだ」という実感を与える評価が必要ではないだろうか。しかし,意図的に励まそうという言葉を掛けたとしても,全てが子どもたちの励みになるとは限らない。かえってやる気がなくなったり,迷惑な気分となったりすることもある。また逆に,こちらの何気ない無意識の行為が,子どもたちの励みにつながることもある。つまり,励みは,他人から得られるものばかりではなく,自分自身が周りの様々な環境から感じ取るものだともいえる。子どもたちの内面から沸き起こってくる励みを指導者がキャッチし,肯定的に評価していくことで,自分のよさを実感することができ,その繰り返しが,次への励みにつながっていく。 筆者は,励みとなる評価の積み重ねは,子どもたちの社会性や主体性の向上につながるのではないかと考えている。社会性や主体性といった数値化することができないものは非認知能力や社会情動的スキルと呼ばれている。無藤は,「非認知能力ないし社会情動的スキルは,IQなどで数値化される認知能力と違って目に見えにくいのだが,学びに向かう姿勢とも言い表せる」(18)として,社会性や主体性は,幼児期から小学校低学年に育成するのが効果的だと述べている。また,効果的に高めるポイントの一つとして,「保育者(指導者)の言葉の働き」(19)を挙げている。つまり,子どもが夢中になって遊ぶ姿から,保育者(指導者)が子どもとの対話を通して,励みとなるような評価をその都度行うことが,子どもたちの社会性や主体性の向上につながるということである。そのためにも,子どもたちが真に遊びたくなるような学習展開が求められる。夢中になって遊ぶ姿を即時評価し,子どもたちの励みにつなげていくとともに,子どもたちが自己評価していくことを繰り返していくサイクルが大切なのではないだろうか。 第2節 運動遊びを学校生活に取り入れる体力向上モデル2016 これまで述べてきたことを簡単に整理して,本年度の研究の方向性を示していく。 ○遊びは自由な活動であり,強制されず,自主的な活動である。 ○プレイ論を基に,運動の機能的特性を明らかにすることで,楽しさを求める体育学習となる。 ○これからの時代に求められる教育は,教え込み型ではなく,しみ込み型の学びであり,体育科も同様である。 ○発達段階を踏まえた指導と評価に課題があり,遊び=学びという学習を構築していくことができないか。 ○子どもたちの励みとなる評価の積み重ねが,子どもたちの社会性や主体性の向上につながるのではないか。 昨年度,「運動遊びを学校生活に取り入れる体力向上モデル」を基に,運動の生活化・日常化についての取組を実施した。今年度も生活化と日常化の取組を継続しつつ,以下のような仮説を立てて研究を進めていきたい。また,図2-4は,今年度の研究の構造図である。 【研究仮説】 小学校低学年において,遊び=学びの体育学習を行うことで,子どもたちが楽しさを実感する体育学習となるだろう。また子どもたちの社会性や主体性の向上につながるだろう。 2016 小学校 体育科教育 9 13

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