度合い分析の継続記録から読み取れるもの ・授業ごとの生徒一人一人の受け止めと変遷(A,B) ・クラス単位での授業の受け止め(C) ・クラスごとの傾向の把握(C) ・その道徳教材・授業の評価参考点(D) このような数値で表される「尺度評価」の分析によって,教師側の目的意識に具体的な指針が生まれ,何より,生徒理解を深めることに大きく役立つと考えた。やはり,分析結果があると,クラスでの生徒一人一人の授業ごとの受け止めがどうであったか,1年を通して一人の生徒における道徳の授業での受け止めがどう変化したか,また,生徒がどの部分で心が動いたか,どの部分で響かなかったのかについてもわかるようになった。 を組んだ表計算ソフトに入力すれば,瞬時に色づけされ,視覚化して提示される。また,各項目について,個人・クラスごとの授業に対する学びの評価点,合計点,平均値が算出されるようになる。 前ページの図1-6で示したワークシートによる,生徒の振り返りの尺度を継続記録した分析表モデルの図1-7を以下に示す。 A A C 今までも生徒に尺度での振り返りを行わせた取組は散見されたものの,その尺度を一年間通しての学びとして関連付ける取組はあまり見られなかった。しかしながら,継続的な学びの達成度を把握すれば,非常に多くのことが読み取れる。生徒の時系列に沿っての変化や内容項目によっての受け止めの違い,教材自体のもつ力の比較やクラスの傾向など,副次的なものも含めて,自己評価の継続記録によって読み取れるものを以下の枠内にまとめ,示しておく。 他にも,ある項目の尺度が低い場合でも,その対象が道徳的価値についての理解が足りないといB D う判断ではなく,逆に尺度が低いところほど,それだけ何か考えたのかもしれないと考え,その視点でワークシートの再検証も行うといった取組を教師が意識するように促した。 ② 記述式による評価への試行 自己評価から生徒の変化を見取る実践から,記述式による評価につなげる試行も行った。 図1-7のような尺度による自己評価の分析表の,横軸(A)をたどって変化を見取ると,ある生徒は毎回の授業に対して積極的に取り組み,様々に思考した上で記入していた。また,評価を開始した当初は満点が多かったのが,後半は自らの学びで足りなかった点を意識して厳しく評価する場面も見られた。それらを総合して判断し,ワークシートの記述を検証したところ,4-(6)家族愛の項目の『象の背中』については,特に多くの注目すべき記述があった。以下,図1-8として示す。 これらの自己評価を踏まえて行った記述式評価例を以下の枠内に示す。 指導の評価の面にも,生徒による自己評価を活用する有効性が認められた。具体的には,図1-7に示した継続記録分析表で,縦軸の変化をたどって見取ると,クラス全体の受け止めが俯瞰でき,その道徳授業で主題に迫れたかが明確にわかることとなる。その結果,より主題やねらいに迫るためにはどういう授業展開をするべきか,また中心発問はどうあるべきかなどを意識して取り組むようになり,それが教師間の道徳授業に対する姿勢図1-7 尺度分析の継続記録分析表(モデル) 生徒の変化を見取る 教材・授業の成否を検証 図1-8 ある生徒の「象の背中」での振り返り 毎回の道徳の授業に意欲的に取り組み,家族愛を扱 った「象の背中」の授業では,色んなことをしてもら っていることに気付き,親への感謝と「親孝行」につ いて深く考えました。また授業を通して,いつも自己 の考えや行動をきちんと振り返ることができました。 このように,生徒自身のよき学びの実感を拾い上げた,記述式による評価モデルを試行したことで,記述式による評価実施への足掛かりとした。 ③ 教師の授業力向上への活用 中学校 道徳教育 6
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