図3-7 D(19)生命の尊重「象の背中」の指導案(変更前) そこで登場人物の心情を中心に追跡していた以前の授業展開から,心情追跡を最小限にとどめ,相互の議論やアクティブ・ラーニングの視点に立った言語活動を導入し,内容項目のテーマそのものに迫る発問を入れるなどの転換を試みた。他にも協力期間に行った助言を分類し,活用しやすいよう,まとめを行った。 (2)A中学校での授業プランの見直し 実際に,本年次に行った授業改善の取組,話合いの視点導入によって変更した授業プランを示して解説する。まずは以前,A中学校で使用していた,変更前のD(19)生命の尊重「象の背中」の指導案を,以下に図3-7として示す。 全体的には整理された指導案であるが,新たな改善点として浮かぶのが「ねらい」がわかりにくい導入部分である。直接提示しなくても,扱う内容項目の「生命の尊重」に関する投げかけのほうが生徒にはわかりやすい。(A) 次に授業全体が,作品世界から離れることなく終始している。物語の進行に即した心情追跡の発問が重複しているのだ。そこで発問を一つ省略し,今の中心発問を繰り上げて,自らの生き方への考えを捉え直す時期の中学生に即して,新たな視点の中心発問の時間を確保するべきである。(B) また,「限りある生命を大事にしたい」とは誰もが考えうる結論だが,実行することは難しく,具体的な実践を意識するまでは至っていないのが図3-8 D(19)生命の尊重「象の背中」の指導案(変更後) まず,(A)の解決として,導入部分にかけていた時間を大幅に短縮しつつ,生命について具体的に考える導入発問を取り入れた。「大事な人が死んでしまったら」を考えることにより,生徒たちは生命の尊重に関する思考に,授業開始後数分で入ることができていた。 中学校 道徳教育 24 現実である。真に大事なことなら「机上の空論」にせず,実践につなげなければならない。そこからあえて現実をぶつけ,真情を引き出すアプローチも有効かと想定した。(C) 最後に,物語の進行とは外れた状況を考えることで,物語の読み取りから脱し,様々な状況の中での普遍的な「生命とは」というテーマ発問について考えさせる。(D) 以上の考えを受けて変更した指導案が以下に示す図3-8である。 A B また,(B)の課題の父親像の心情追跡の重複について,授業者が軽く説明を加えることで変更前の発問1を割愛することができた。このように(A)と(B)の解決によって授業展開を効率的にすることから,中心発問の深化に使える時間をより多く確保できた。そのことは (C)の課題の解決につなげる時間ができ,中心発問へと派生する様々な授業C D
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