001総教C030705H28最終稿(中山)
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11月までの道徳の時間で,最も考え方や判断に影響 があったと感じた【よりよく生きる喜び】の教材「風 に立つライオン」の授業では,一つのことでも様々な 立場や考えがあることに触れることができました。そ のことは,「人の命を助けるためには,困難に立ち向 かわないとダメなんだと思いました。」と書かれた振 り返りからもよく伝わりました。自分の意見を述べた 後に,みんなの意見で印象に残った意見を書きとめる など,自分だけの考えにこだわるのではなく,他の人 の考えによく耳を傾けていました。 行動面での見取りも加え,ワークシートからの読み取りだけでは見えてこない部分に注目できたことは今回の研究の目指したこととつながった。 また更に今回,記述式評価をするにあたって,記述量や内容によって被評価者の受け止めがどうなるのかも検証するために,評価の形式を学年によって変更を加えて実施した。具体的にはある学年での評価の実施にあたり,記述は第3章の第1節(6)に示した手順のうち,⑦の部分を省いた記述式評価に削減したのである。以下の枠内に,削減した評価例を示す。 11月までの道徳の時間で,最も考え方や判断に影響 があったと感じた【よりよく生きる喜び】の教材「カ ーテンの向こう」の授業では,様々な状況にも考えが 及び,人間としてどう生きるべきかの判断力も持てま した。そのことは,「これからの人生において,大切 なことについて自分の考え方に影響があった」と書か れた振り返りからもよく伝わりました。授業では,ワ ークシートにしっかり考えて記述していました。 評価で良いものを作成しようと思えば,そこには手間をかけることが必要であるが,問題は労力に見合った成果が見込めるかどうかである。記述項目を一つ精選することで被評価者の受け止めにどのような影響が生じるかを見極め,適切な記述項目と記述量を探ることは必要である。 図3-6 道徳の評価用紙例 こうして作成した①~⑦の評価を結合させ,生徒と保護者に提示したのだが,その際に用紙中に生徒に向けての一言を保護者にお願いする欄を設けた。以下,図3-6として示す。 評価の記述としてはかなりの量になったが,「型」を示したことで,教師が評価にかけた時間は生徒一人につき6分ほどの負担で事足りた。力をかけるべきポイントを明確にし,手順が整理されたからだと考えられる。 また今回,保護者の一言欄を設けたことで生徒は教師・保護者の両者からその学びを認め,励まされる評価を受け取ることが可能になった。 生徒を支える存在の保護者にとって,生徒の学びが認められることは大きな喜びであり,保護者自身の励みになる。また,教師に対する信頼感も生まれ,結果,生徒・保護者・教師が手を取り合って学びに向かう,そんな理想的な学習環境の礎に,道徳科はなることができると感じた。 (7)試行した評価の記述内容について 道徳の評価は「児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め,励ます個人内評価として行うこと」(34)とされるため,自己の学びを低く感じていたり,授業に積極的でないなどの生徒の評価に教師は苦慮すると考えられる。そこで図3-1(p.16)の紹介で取り上げた生徒Bについての評価を取り上げ,顕著な意思表示のない生徒の評価をどう行ったかについて,事例を紹介する。 すべての項目に「2」をつけ,意欲的に取り組めているか未知数であった生徒Bであるが,セルフチェックでの結果を受けて,教師が平時より意識中学校 道徳教育 22 をもって授業の見取りなど,学びの把握に努めることができた。結果,自分の考えを表明することは消極的だが,授業の中で他人の意見をメモする様子など,他者から学ぼうという意識は強く持てている姿が確認できた。 それらを踏まえて「型」に沿って項目を抽出していき,記述した評価を以下の枠内に示す。 記述内容の差異による二つの評価の比較・検証については次章の(1)にて行う。 (8)評価の意識による自己評価の向上 本年次は記述式の評価の参考として自己評価を

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