③ 授業などからの見取りの整理 教師が授業での顕著な姿を基に見取れる学びについて例示したものだが,評価をする教師はここから個々の生徒の姿を脳裏に浮かべて文章化する。評価の末尾にそれを付加することで,すべての面を総合的に評価していることが生徒・保護者に伝わると思われる。よって,ここまでのものを結合して評価とすることが最も望ましい。 (6)評価の実践例 ①11月までの道徳の時間で,②最もこれからの自分に 生かしていこうと感じた③【B(9)相互理解,寛容】の ④教材「関係ないという言葉」の授業では,⑤学んだ ことから,自らの行動を検証し,もっとよりよく生き ていこうという意志を持てました。 次にまとめ振り返りとワークシートの最後の記述を併せて読み,顕著であった学びの記述を取り上げて構成したものを⑥として以下に示す。 ⑥そのことは,「日々、「関係ない」と言ったこと。 言っている人など思いだすと、たくさんあると思いま す。いつだって、人と人とのつながりはあって関係な いことなどない。そう新しい考えを身につけることが できました。だからこれからは、人として、色々なも のとの関わりを大切にしたいです。」と書かれた振り 返りからもよく伝わりました。 最後にその生徒の道徳の授業での姿を思い浮かべ,表3-3を参考に,生徒の授業での良かった学びについて記述した部分を以下に示す。 も配慮しなければならない。本研究の尺度評価には,その点への対応の意味合いもあり,言語化が不得手な生徒であっても,自らの学びの達成度の実感を表現できることをねらっている。 さらに教師からの授業の様子などの見取りについても,六つの分類での整理を試みた。以下に表3-3としてまとめたものを示す。 表3-3 授業の様子からの六つの分類 二校で実施した評価の試行における,その構成モデルについて説明する。生徒の様子に関して,文章記述の得意な教師は自分の中に一つの「型」を思い浮かべ,それにしたがって文章を構築することが多い。そこでまず,考えの始点となるものを示すために「型」を考案した。 「型」は七段階で構成する。①対象時期,②道徳性の諸様相のうちどれが顕著な学びであったか,③該当の道徳授業の内容項目,④該当の道徳教材,⑤ルーブリックからの読み取り(表3-1,P.17),⑥ワークシートなどでの生徒の記述を引用,⑦授業の様子からの見取り,という構成で記述し,推敲,添削して文章を整えたものを再確認するという手順を踏んだ。 評価に迫るアプローチとして,三つの視点からの迫り方を第3章の第1節(4)で先述したが,そのうちの「時系列をさかのぼって評価する手順」を採用した具体例を紹介する。 図3-3(p.19)で取り上げた生徒のまとめ振り返りを例にすると,この生徒は道徳性の三つの諸様相のうち,道徳的実践意欲と態度に該当する三つ目の振り返りに目を引く記述が存在した。それを図3-4 まとめ振り返り 実践意欲と態度の記述欄 図3-5 ワークシート 生徒記述例 ⑦○○(生徒名)のどんなことにも,ちゃんと向き合 って考える姿は,本当にすてきです。その姿勢をいつ までも大切にしてください。 中学校 道徳教育 21 抜粋したものが以下に示す図3-4となる。 ここでは「関係ないという言葉」という教材の授業が取り上げられている。そこで,ワークシートの記述も確認する。以下に図3-5として示す。 授業時のワークシートで生徒が尺度評価として自己評価したものと,表3-1(p.17)で示した「ルーブリックからの整理」を照らし合わせ,生徒の姿を読み取る。ここまでが「型」で示した①~⑤になる。実際に構成した評価の前半にそれぞれの段階を示す数字を加えたものを以下の枠内に示す。
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