② 尺度の継続記録から比較・抽出 図3-2 大きな期間ごとの道徳の時間のまとめ例 はなく学習活動であり,生徒自身が学びを整理するためのツールとして活用することを目指している。そのため,最終の見取りとして分割することはないが,学びの見取りの過程としては,三段階に分けたルーブリックから学習活動の見取りを行うことは有効だった。 もちろん,例に挙げた以外の学びの読み取りも有効であり,教師が目の前の生徒の真情に響く記述式評価を行うことが最適である。このような記述評価例を挙げたことは,生徒を特定のパターンに落とし込み,画一的な評価を出すテンプレート化を目指したわけではなく,むしろ,その逆であることを確認しておく。 決められた枠組みの中に仕分けること,それは道徳の評価の目指す方向ではない。提示された五つ程度の記述評価例から,見取りの幅を広げ,それぞれの生徒の真情に応じた記述式評価を教師から引き出すためのものである。 繁忙極まる教師の仕事を整理し,無駄を省いて効率化することは必然である。しかし,生徒への学びの見取りを安易に簡略化するべきではなく,何の手間もかけずにできあがる評価では生徒の「真情」に迫ることはできないと考える。 (3)評価に迫る三つのアプローチ 具体的な手順のうちで効果的と思われたアプローチが三つある。 まず一つ目は図3-1(p.16)として挙げた,セルフチェックを入力した一覧表である。このセルフチェックで,年度当初にその生徒が自己評価を低くつけた項目に注目し,同じ内容項目をねらいとした道徳の授業で,その生徒がどのように変化したかをチェックする。ここで顕著な尺度の向上があれば,その授業でのワークシートの記述を確認し,良かった学びを取り上げるという手順である。 二つ目は図1-7(p.6)に示した,1年次の研究から継続する,毎回の道徳の授業での自己評価の尺度が入力された継続記録分析表である。 継続して記録された尺度集計の比較は,その生徒の変化を見抜くのに最適の資料である。評価者はそれらの記録を俯瞰して,劇的な変化があった場合はもちろんのこと,比較的高い自己評価をつけた授業を抽出してその授業のワークシートを点① 事前セルフチェックとの比較 中学校 道徳教育 18 ③ まとめ振り返りシートの導入 検したり,また逆に低い自己評価をつけた授業で,生徒本人が感じた課題意識を取り上げたりすることも可能である。これらの多様な読み取りは,道徳が机上の空論ではなく,複雑で簡単には正解が出ない現実世界でなお,重要な指針となるために必要なことだと感じる。 三つ目は長期的な定着の見取りの実践として行うまとめ振り返りである。該当期間のすべての道徳授業について,教材名,出典,内容項目,主な内容,中心発問などを一覧表にまとめたものを,手元の資料として生徒に示した。具体的に以下の図3-2にその形式を示す。 道徳の時間での毎時間の振り返りは,いわば瞬間的な盛り上がりであり,それが消えずに持続してこそ,その生徒に道徳的な諸価値が定着したといえるであろう。また逆に,その授業を受けたときには腑に落ちていないことが,時間を経て,日常生活での実感にも根ざすことで,その生徒の中
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