001総教C030705H28最終稿(中山)
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他方で,主題やねらいの設定が不十分なまま,これら の指導過程に過度に固執したり,これを「型」どおり に実践していればよいと捉えたりする姿勢も一部には 見られ,指導が固定化・形骸化しているのではないか, 読み物の登場人物の心情の読み取りのみに偏っている のではないか,望ましいと思われることを言わせたり 書かせたりする指導に終始しているのではないかとい った指摘につながっている。(29) もちろん,今までの「目の前の子供たちの実態や状況に応じた道徳の時間の工夫や改善を行うことが大事であるとの認識のもと,質の高い道徳教育の実現に向けて取り組んできた(30)」ことには最大限の意義がある。今後はそれを認めたうえで,「自分ならどのように行動・実践するかを考え,自分とは異なる意見と向かい合い議論する中で,道徳的諸価値について多面的・多角的に学ぶ道徳教育への質的転換を図ること(31)」を求めたわけである。 てくる。 また発言を引き出す面においても,この展開法では発問者の「切り返しの発問」のセンスが重要となる。本質を突き,生徒の考えの盲点をも突くような発問をかぶせなければ,通り一遍の,深まりがない授業になってしまう。よって,その発問の進行者は教師が担うことになる。そうなると勢い,教師によって引き出された生徒の意見は積み上げられるが,生徒同士の双方向の意見交流が遮断されることにもなりうる。 道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議で,従来の道徳の授業展開で散見された課題を挙げている箇所があるが,以下に引用する。 (6) OJTによる授業力向上への手立て(3b) そこで登場人物の心情を中心に追跡していた以前の授業展開から,心情追跡を最小限にとどめ,相互の議論やアクティブ・ラーニングの視点に立った活動などを導入し,内容項目のテーマそのものに迫る発問を入れるなどの転換を試みた。 1年次の研究で,「持ち回り道徳」の提案から,同教材を複数回こなす中で,授業法の見直しを「どこ(どの視点)」に注目して行うかという指摘はできた。しかしながら,現場ではそのうえで「どのように」改善したらいいかを即,指摘することが求められる。そこで研究協力員の道徳授業を見取り,分析を基に改善のアドバイスを行う取組を行った。そして,生徒による自己評価分析表と連中学校 道徳教育 15 (11) 山﨑英則『教育哲学へのいざない』学術図書出版社 2007.4.20 p.49 (12) 前掲(9) p.109 (13) 文部科学省『中学校学習指導要領解説 道徳編』(平成20年度版) http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/08/10/1282846_2.pdf 2017.3.6 p.131 (14) 前掲(11) p.51 (15) 文部科学省「『道徳』の評価はどうなる??」 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/doutoku/__icsFiles/afieldfile/2016/08/17/1222218_001.pdf 2017.3.6 (16) 文部科学省「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について(報告)【概要】」 http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/08/08/1375482_1.pdf 2017.3.6 (17) 前掲(9) p.24 (18) 文部科学省「中央教育審議会答申『道徳に係る教育課程の改善等について』」2014.10.21 p.3 (19) ダネル・スティーブンス+アントニア・レビ著 佐藤浩章監訳『大学教師のためのルーブリック評価』玉川大学出版部 2014.3.25 p.38 (20) 道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について(報告)」 http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/08/15/1375482_2.pdf 2017.3.6 p.13 (21) 前掲(20) p.11 携させたアドバイスの蓄積をすることで,道徳授業の改善の示唆を与えられると考えた。 具体的にはよく「ジグソーパズル型からブロック型へ」と言われる授業デザインの転換である。教師が綿密に描いた完成形にはめ込もうとすると,発問が予定された答えへの誘導となり,「自分なりの納得解」を出そうとする中学生段階では授業に魅力を感じなくなって,「道徳は面白くない」となってしまう。そこで教師と生徒がそれぞれの考えを持ちより,ぼんやりと持つ完成形のイメージを,徐々に作りこんでいく授業にすると,イレギュラーな反応でさえ前向きに受け止め,生徒たちも自分たちなりの納得解を認めてもらえる道徳になり,学びが活性化する。 そのためのノウハウや思考ツールの活用を提案し,教師が抱える困りの解決を図って蓄積する。 以上の取組を念頭に,実践に入った。

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