001総教C030705H28最終稿(中山)
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児童生徒が行う自己評価や相互評価について,これら 自体は児童生徒の学習活動であり,教師が行う評価活 動ではないが,児童生徒が自身のよい点や可能性につ いて気付くことを通じ,主体的に学ぶ意欲を高めるこ となど,学習の在り方を改善していくことに役立つも のであり,これらを効果的に活用し学習活動を深めて 行くことも重要である。(21) 評価は,あくまで学習活動であり,教師が行う評価活動ではない」ことである。よって生徒が行う自らの学びの検証のための指標という意味合いになるが,自己評価が生徒の学びに資することは文部科学省も認めており,報告の中でも取り上げられている。以下の枠内に引用する。 (3) 記述式による自己評価の実用化(2a) 道徳における記述式の評価については,第1章の第1節(3)で述べたように,1年次の研究で試行モデルを提示する段階までは達した。しかしながら,道徳の教科化が実施された場合,クラスの全生徒分の評価を行う際に膨大な時間が取られるようであれば,円滑な道徳の教科化を推進する障害になりかねない。ゆえに,その解決も狙った「生徒による自己評価」を中心に組み立てる道徳教育の運用システム(図1-5)であり,尺度評価の継続分析(図1-7)の提案であった。 ある期間を経て道徳の記述式評価を出す場合,その期間における生徒分の道徳授業の全ワークシートを,それぞれ分析しながら見直すことは多大な時間と労力が必要となる。しかしながら,文部科学省も「個々の内容項目ごとではなく,大くくりなまとまりを踏まえた評価とすること」(22),「1回1回の授業の中で全ての児童生徒について評価を意識して変容を見取るのは難しいため,年間35時間の授業という長い期間で見取ったりするなどの工夫が必要」(23)と伝えているように,これからは全ての内容項目に対して個々の授業の評価を下すわけではなく,それぞれの大くくりの期間中での顕著な学びを取り上げて,認め,励ます評価を行うことこそが求められている。 そこで,本研究の効果が発揮される。生徒による自己評価の尺度評価について,継続して入力・分析し,自動的に色分けされたデータから該当期間を眺めることにより,注目するべき変容があった学びの授業を,ピンポイントで抽出することができるわけである。 また繰り返し述べたように,「生徒の行う自己中学校 道徳教育 13 評価について,それ自体は学習活動である」ので,尺度での数値の上下に囚われることなく,尺度が振るわない授業からも「達成できていない道徳的価値と真剣に向き合い,どうしたらいいかを考えることができた」という評価につなげることも可能である。 ただし,毎授業ごとの評価はその授業を受けた時点での短期的認識である可能性もあり,長期的に定着した道徳的価値のほうが上位の学びであるという考えもある。そこで2年次は短期,長期,両面でのアプローチを図るため,該当期間をまとめて振り返る学びを行うことも計画した。 このことは文部科学省から公示された,指導方法・評価についての報告の中にも,「学習活動における児童生徒の具体的な取組状況を,一定のまとまりの中で,児童生徒が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を適切に設定しつつ,(後略)」(24)という記述で推奨されている。 評価材料は複数ある方が,多様な視点での判断を行えるので,毎週の道徳授業での生徒の記述についても継続して対象としていくが,評価を実践するとなれば,一度に大量の処理をしなければならなくなる。毎回の道徳の記述から評価につなげる手法については1年次の研究で取りあげた(25)が,該当期間をまとめて振り返る学びの最大の利点は,長期的視点から道徳的効果が定着したと判断する学びを焦点化できる点である。しかも振り返りの時期を評価の時期と重ねることで,生徒にとって,より最新の認識に寄り添った評価が可能になると考えられる。 (4) 評価を受けての意識調査(2b) 教師が行った評価を,被評価者がどう受け止められるのかという検証も必要である。また,もっとも生徒の近くに存在し,総じて生徒に対する一番の理解者と目される保護者に,第三者的視点で,評価の妥当性を判定してもらうことも有効であろう。また,このような道徳での取組を発信することによって,生徒の道徳力の育みを,学校だけでなく,家庭と連携して見守っていくという意識づけのねらいも存在する。 多くの学校では道徳の時間の学びを,学級通信などの媒体にして知らせているが,その発信は双方向ではなく,生徒の学びのパートナーとして道徳教育に保護者も参加しているとは言い難い。これから学校現場で行われている道徳教育への理解

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