001総教C030705H28最終稿(中山)
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・せっかくの学生の課題への取り組みが,学生側の誤 解や理解不足によって評価につながらないという事 態を回避できる。学生にとっても有益であるし,評価を行う教師にとっても望ましいことである。 ・教育の過程で学生自身が「主人公」であるという自覚を高める。このことで学生は,与えられた課題にもっと真剣に取り組み,学習に専念する立場にあるという自覚や創造性も高めることができる。(19) に対応する,汎用性のあるルーブリックを作成し,内容項目ごとに生徒はそれをアレンジして学びを尺度化させることにした。 すべての評価基準を教師が提示する形としなかったのは,道徳の時間では生徒に能動的学習を促す意味合いが強い。時間的制約の面からすべての学習基準を生徒に任すのは困難だが,受動的学びでは,ルーブリックの利点が失われるのである。 ルーブリックの開発者ダネルの視点による,ルーブリック評価の利点を以下にまとめる。 また,学習指導要領解説の記述から構成すると,教師にとって意味付けが把握しやすいが,その記述では生徒にとって難解であり,直感的な自己評価に繋がりにくい。常に生徒の手元に置いて,学習のたびに参照できるようにするため,生徒用として平易であり,汎用性をもつ記述に直した。作成した自己評価のルーブリックを下記に表2-3として示す。 ルーブリックを作成する効果の一つは,大まかであっても,ある程度の評価基準が担保されるという点にある。「道徳科の評価を推進するに当たっては,他教科と同様に,学習評価の妥当性,信 表2-3 自己評価のためのルーブリック(生徒用) 中学校 道徳教育 12 頼性等を担保することが重要」(20)と文部科学省の報告に明記されたように,そこにはある程度の客観性と共通認識が求められる。 また,自己評価は生徒個人が自らの学びを判定するものではあるが,その判定基準さえもすべて生徒個人に委ねると,何をもって「とても」なのか,「ぜんぜん」なのかもまちまちになり,評価を行う際に混乱を起こすことも考えられる。かといって,厳密に細かく規定した評価基準を作成すると,思考の柔軟性は失われ,生徒自ら考える姿勢が損なわれることになってしまう。よって汎用性の高い,大まかな基準のルーブリックを心がけ,最低限の自己評価基準を生徒間で統一しておき,授業ごとの内容項目は生徒がその都度更新して考案することが最適と感じた。 特に思考を深める段階の学びとしては,生徒が学業修了後も継続して取り組むことを目指すため,主体的学びの意識を根付かせ,自らの学びを批判的に検証するスキルと道徳的内容項目を把握して応用するスキルを獲得するためにも,この形式が有効だと思われる。 以上のことを踏まえて,汎用性の高いルーブリックを生徒による自己評価に採用し,道徳の運用システムに組み込んだ。これにより生徒の判断に妥当性が向上した形での,尺度評価が可能になると考える。また,その蓄積が教師による評価の妥当性を担保し,真情に迫る記述式の評価に繋がっていくことを構想した。 また,評価につなげるにあたり,注意すべき点をもう一度述べておく。それは「生徒による自己

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