001総教C030705H28最終稿(中山)
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押し付けたり,主体性をもたず言われるままに行動す るよう指導したりすることは,道徳教育が目指す方向 の対極にあるものと言わなければならない。むしろ, 多様な価値観の,時に対立がある場合を含めて,誠実 にそれらの価値に向き合い,道徳としての問題を考え続ける姿勢こそ道徳教育で養うべき基本的資質である (18) 以上のことを踏まえて,道徳におけるルーブリックの作成に取り掛かった。まず,道徳の時間における学びで重要な「道徳的判断力」「道徳的心情」「道徳的実践意欲と態度」の三つの観点に,「教材観」を加えた記述を検証し,その様相を達成度別に五段階で分類した。それを一覧表にまとめて構成したものが以下の表2-2となる。これをルーブリックの基礎とした。 図2-2 2年次の四項目の尺度評価ワークシート 年度の学習指導要領を参考にして,「道徳的心情・道徳的価値理解・道徳的価値の主体的把握・道徳的価値実現の意欲・教材観」と五項目であった。それを,2年次は一部改訂された学習指導要領の順番に則り,「道徳的判断力・道徳的心情・道徳的実践意欲と態度・教材観」の四項目に精選した。 こうすることで各項目が学習指導要領上の何に該当するのかが明確になり,教師が生徒の振り返りにおいて,伸ばしたい力の整理がしやすくなった。またこのことは生徒にとっても同様で,項目の精選により,よりねらいを絞って授業を振り返れる利点につながった。 以下の図2-2で示したものが2年次の研究で採用する四項目のワークシートになる。 次に取り組んだのがルーブリックの作成である。ルーブリックの導入は,現実のもつ多様性・複雑性を踏まえた学びを目指す中学校道徳にとって,理想的であり,文部科学省が考える「考え,議論する道徳」や主体的で対話的で深い学びでの活用 表2-2 道徳で付ける力の達成度の分類表 に効果が見込まれる。 考え,議論する道徳を推進する意図として,主体性を持って思考し,様々な意見を鵜呑みにせず検証できる生徒を育成することの達成があり,その意図と批評的思考をもつことが合致した結果であろう。文部科学省の見解を以下に引用する。 注意点としては,今回は道徳における自己評価のルーブリックであるという点があげられる。他教科のルーブリックであれば授業単元ごとに綿密な評価基準を作成する形もある。だが,毎回の道徳の授業で作成するには時間的制約もあることから,そのような形式を道徳のルーブリックとするのは現実的ではない。そこで,あらゆる内容項目 道徳教育の本来の使命に鑑みれば,特定の価値観を中学校 道徳教育 11

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