第1章の第2節で指摘したそれぞれの課題に対策を立て,その課題①を発展項目の1a,1bに,課題②を発展項目の2a,2bに,課題③を3a,3bに割り振った。これらは発展構造図の循環中で互いに密接に関係し,相互に影響を及ぼし合っている。そのため,生徒による道徳における自己評価の精度が上がることで,記述式の評価や指導の評価に好影響を与えるなどが見込まれる。2年次の改善の際に,道徳の運用システムのどこか一部の改善だけではなく,全体の向上を図ったのはそのためである。それぞれの改善が連動し,相互に好影響を及ぼし合うことで全体の強化が図られる。 (1) 内容項目の事前セルフチェック(1a) 生徒自身の納得を引き出すため,まず,年度当初など,授業を受ける前段階での道徳性の調査を行い,比較の基準とすることを考えた。 そもそも,道徳の授業の際に行う生徒による自己評価は,その道徳の「授業内での学び」を評価するという側面をもつ。そのために,自己評価にはその授業内に取り扱った教材という視点が絶えずついて回る。しかしそれでは,道徳の各内容項目に対して,その生徒の純粋な到達度合を測ることができない。しかも道徳の評価は「他の児童生 表2-1 道徳セルフチェックシート(生徒用) 中学校 道徳教育 10 徒との比較による評価ではなく,児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め,励ます個人内評価として行うこと」(16)とされるため,その生徒の道徳的学びの成長が重要となる。つまりその生徒の中での比較データが必要になるのだ。 そこでその比較対象となるデータのために,学習開始以前の道徳的内容項目,全22項目に対して,セルフチェックを導入することを考案した。 学習指導要領解説の「内容項目の指導の観点」の中の一覧表(17)を参考に,その文面を中学生に向けて平易な形に書き直し,学年当初にセルフチェックができるようにしたものが下記の表2-1となる。生徒たちは自らが一年間で学ぶ道徳的内容項目がどのようなものであるかを知るとともに,それぞれに対して,学年当初の学びの開始時点で自らの意識がどの程度まで到達しているかを自分自身に問いかける。そこで記録された尺度と授業終了時点の学びを比較することで,学びの変容について言及する際,ある程度の妥当性を担保することができると考えられる。 (2) 評価基準のルーブリックの作成(1b) 自己評価をするにあたって,まず授業終末での振り返り項目の見直しを行った。1年次は平成20
元のページ ../index.html#12