001総教C030705H28最終稿(中山)
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どの程度達成されたかを自己認識させる働きをもって いる。したがって,それが十分でない場合は,その過 程でどこに問題があったのかが顧みられ,次回のとき には,そうならないように配慮される。評価は過去の ことを反省するための機能を持っていると同時に,未 来に向けて一歩踏み出していくきっかけを与える機能 を持っているのである(14) ここには評価が担っている,「生徒を育てる」という本来の役割が指摘されている。生徒らの学びの目的に対して不十分である点を自己認識させ,未来に一歩踏み出す機能が評価にあることが最も重要なことなのではないだろうか。 全体を貫く構想として,第1章の第2節で述べた,1年次の課題を受けて発案した研究2年次の発展項目について,まとめたものを,以下の枠内に示す。 1a内容項目の事前セルフチェック(①) 1b評価基準のルーブリックの作成(①) 2a記述式による評価の試行(②) 2b評価を受けての生徒・保護者の意識調査(②) 3a授業展開・手法の見直し(③) 3b OJTによる授業力向上への手立て(③) この6つの項目を1年次の自己評価の好循環の構造図に,補充・整理・発展の取組として加えたものを図2-1として以下に示す。 特に,数値で評価して他の子供達と比較したり,入試 で活用したりすることはしません。※下線筆者(15) これは道徳の教科化に対する一部の誤解に対して,政府の立場を示したための記述であるが,ここで「評価は教育改善のためのものであり」と規定してしまうことは,そのために道徳での評価が生徒に与える効果を検証することが考慮されなくなる可能性もある。 図2-1 自己評価から生じる好循環の発展構造図 以下に引用する。 昨今,学校に対して外部から様々な要求が想定されるようになり,教育現場でも「説明責任」などの言葉がよく使われるようになった。無論,きちんとしたルールに従って評価がなされていること,公平・公正であることを白日化することは重要なことである。だが,学びの主体である生徒への効果を確認することがまずなされるべきはないか。しかしながら,文部科学省の公報上に評価が「指導の評価」を主目的であると読み取れるような記述がなされている。以下に引用する。 生徒の知識理解の分野であれば,外部からの査定は可能であるが,真情や道徳性に対してその度合いを外部から査定することは困難である。出された評価がどれほど正確であっても,その正確さを証明することはほぼ不可能である以上,その出された評価に信頼性を担保することはできない。 だからこそ,筆者は生徒による自己評価を評価の軸にすべきだと判断した。道徳性を高く保ちながら生きていくことは,これからの生徒たちにとって大切なテーマである。道徳は義務教育を終えた後も,その先の社会ですべての人々に関わる教科である。ならばこそ,道徳性について正確な評評価とは,それが到達すべき目的と照らし合わされ,評価は教育改善のためのものであり,道徳科では,価を出すことよりも,生徒自らが様々な事象から己を振り返り,大切な「道徳的価値について学び続ける力」をつけさせることが大事なのではないだろうか。 「評価のための評価」ではなく「生徒のよき学びのための評価」。また,外部からの正確さより,生徒の真情により迫れる評価であること。その視点に立脚して,今年度の研究について構想した。 第2節 自己評価システムの改善 研究2年次の発展項目 中学校 道徳教育 9

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