図1-4 学校図書館と子どもの 対話のイメージ 構成し,教科の学習内容と,必要とされる資質・能力を,同時に子どもたちに育成することが求められる。 (2)学校図書館との対話 学校図書館をはじめとする図書館という場は,こちらが「○○について調べよう」という明確な意図をもって利用する場合に利用者の意図に対する「応え」を返してくれる存在であり,また,明確な意図をもたずに利用する場合に利用者に問いかけ,「ヒント」を与えてくれる存在でもあると考える。図1-4は筆者の考える学校図書館と子どもの対話のイメージを単純化し,図示したものである。 現代社会では,情報を得ようとするとき,もっとも手近な手段として,インターネット検索を使うことが多い。一般的には検索エンジンを使い,キーワードを入力して情 報を得る。この場合,目的とする内容を最初に決めて情報を検索することになる。また,得られる情報も,そのキーワードを手掛かりに,コンピュータ(人工知能)が絞り込んだ情報になる。学校図書館でも,様々な検索システムを使って,資料を探すことは可能である。しかし,書架に図書資料が並ぶ学校図書館では,目的の資料と同じ書架に,同じ分野でも全く異なる図書資料が置かれており,通常,それらが自然に子どもの視界に入ることになる。情報を絞り込んでいくインターネット検索と比べ,探している情報だけでなく,異なる情報を得て学習を広げることが,情報を得る過程で自然に起こる。この繰り返しは,子どもが学習内容についての思考を広げたり深めたりすることを,意図せず支援することになるのではないかと考える。 また,図書館という場で学習する場合,明確な目的を定めず「なんとなく」図書館に入っても,書架を見て歩き,ふと目についたタイトルの本を手にとるうち,次第に「なんとなく」の部分が自分の中ではっきりしたり,意外な解決策を得たり,まったく興味のなかった分野に対象が広がったりすることが往々にしてある。1年次の研究実践の中でも,「なんとなく」イギリスという国に興味をもち,おおまかな情報を頭に入れた後,図書館内を歩き回っていた子どもが,意図せず目にとまったイギリスの作家「シェイクスピア」の本を切り口に,中学校 図書館教育 6 テーマを決めて学習を始める様子が見られた。学校図書館という場は,書架に並ぶ本のタイトルを見ているだけでも,子どもに様々な気付きを与えてくれる存在であると考える。 更に,本をパラパラとめくってみて,そこにヒントを得て次の本をさがしたり,「逆に他の分野を当たろう」と別の分類の書架へ移動していったりすることもある。キーワードで情報を検索する仕組みのインターネットに比べ,本という資料はある一定の分野や内容の情報で構成されているため,一冊の本の中に等質な情報ばかりが並ぶことも少なく,子どもにとって学習を発展させやすいものになっていると考えられる。このような本の性質を学習に活かすことで,それぞれに疑問や関心の異なる子どもの主体的な学習を,より多方面に展開することができる。 加えて,学校図書館で図書資料を活用して情報を得ることは,インターネット検索に比べて,いわゆる「正解」や「解決法」に素早くたどり着くことが困難で,試行錯誤を繰り返すことが多い。求める情報が見つからないことも珍しくない。しかし,その試行錯誤の過程には,自分の思考を働かせて情報を探し取捨選択を繰り返す機会や,じっくりと考える機会,自分の中のあいまいな課題と向き合う機会,予想外のものに出合って考える機会などが含まれやすいのではないかと考える。そして,これらは現代の子どもたちの日常からは,奪われがちな要素である。だからこそ,学校教育の中でこのような機会を作るため,意図的に学校図書館で情報を得る学習を取り入れていく必要がある。 これらはインターネットを含むICTを活用した学習について否定するものではない。むしろ,図書館や本のもつ特性とICTのもつ特性を知り,将来にわたって,これらを効果的に選択活用し,組み合わせて学び続けるためにも,情報を活用して学ぶ基礎として,学校図書館で学ぶ体験が重要であると考える。 ここまで述べてきたことから,学校図書館との対話を意識した学習を行うことで,子どもたちは学校図書館を活用した次のような学びを経験し,その方法を身に付けることができると考える。 一点目は,自ら課題を発見し解決する学びである。学校図書館の資料の中から,自ら問題を発見し解決する学習を行う。これにより,教えられたり与えられたりする学び方ではなく,自ら課題を発見し解決する学び方を身に付けることができる。 二点目は,自らの考えを広げ,深める学びであ
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