とがうかがえる。したがって,2年次の研究では,子どもの疑問や興味関心と,子ども自身で行う学習や思考の過程の振り返りに焦点を当て,研究を進めようと考えた。 第2節 学校図書館を教科授業で活用する意義 学校図書館は「テーマを見つける場,調べる場,情報活用能力を身に付ける場,発表の場,コミュニケーション能力育成の場」(7)など,様々な場としての側面をもつ。本節では,学校図書館のこのような特性を教科授業で活用する意義について述べる。(1)主体的・対話的で深い学びと学校図書館 前述の答申では,主体的・対話的で深い学び(いわゆるアクティブ・ラーニング)の実現の視点として以下の3点を挙げている。 子どもの主体的・対話的で深い学びを実現するために,これらの視点を取り入れた授業を学校図書館で展開する理由を,以下に述べる。 第一に学校図書館では,興味や関心の対象を様々な分野に広げて学習することができるからである。学校図書館ではすべての分野にわたって資料が準備されており,子どもはその中から興味や関心の対象を見出すことができる。また,各教科の視点は確保しつつ,ある問題を他教科や他分野に広げて考えたり,より専門的に深く考えたりすることが可能であり,子ども一人一人の主体的な学びにつながる。 第二に資料・情報を介して外界と対話する学習が可能だからである。通常,対話的な学びは,子ども同士,または教師と子どもの対話を想定することが多いが,筆者は人との対話はもちろんのこ【主体的な学び】 学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しを持って粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。 【対話的な学び】 子ども同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。 【深い学び】 習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連づけてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。中学校 図書館教育 5 (8)と,様々な情報との相互作用によって対象世界について理解し,自らの考えを広げたり深めたりしていくことが,対話的な学びであると考える。自分以外の世界との相互作用によって学んでいくことは,様々な価値に触れながら協働的に社会を作っていく力に通ずる。このような学び方に学校図書館は適している。学校図書館で,子どもたちは様々な分野,様々な時代の情報と対話しながら学ぶことができる。また,子どもたちは情報が分類された空間の中で,各分野の情報群と対話しながら学ぶことができる。もちろん,多くの学校図書館では大きな机が置かれるなど学習環境の整備がされており,人との対話的な学習にも適している。 第三に学校図書館には,情報を精査し,問題を見出す場として有効な要素が備わっているからである。多くの授業では,教師が子どもの問題発見につながる導入教材などを準備する。その際,どのような教材や情報を子どもに提示するかは教師が選択することになる。学校図書館で問題発見・解決型の学習を行う場合,学校図書館にある情報を比較したり分類したりすることで,子どもたち自身で様々な問題を見出すことが可能である。もとより情報が精選され,書籍を中心として,子どもにも理解しやすいように情報整理された資料が集められているため,子どもにとっては,情報を活用して問題を発見しやすいと考えられる。更に情報を収集し,精査し,活用しながら問題解決型の学習を行っていくことで,子ども自身で学びを深めていくことができる。 第四に学校図書館では,資料や情報と,それらを活用してどのように考えたかを,関連づけて記録していくことにより,子どもの思考をより明確に可視化できるからである。学校図書館では,様々な資料からの情報を活用して,子どもそれぞれに異なる学習や思考の過程をたどることが可能である。それらの過程を,資料や情報の記録とともに可視化し,それを子ども自身が振り返ることで,自らがどのように考え,学習してきたかを客観的に振り返り,改善し,主体的に学びを広げ,深めることができる。 従来,各教科の授業では,内容の理解が重視される傾向にあったが,答申では「学習の内容と方法の両方を重視し,子供たちの学びの過程を質的に高めていくこと」(9)が次期学習指導要領の目指すところとして示されている。教師が指導内容と方法を考えるとき,主体的・対話的で深い学びを実現するための3つの視点を意識して教科等の授業を
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