001総教C030705H28最終稿(中町)
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①「ヒトラー」という人物について書かれた本を読む。 ②①で本を読むうち,軍事目的で整備されたアウトバーンについて興味をもつ。 ③アウトバーンが現在どのように使われているか調べる。 ④ドイツの自動車工業について調べる。 可欠である。そこで,1年次に子どもたちの学習の様子を観察した中で,自らの課題を主体的に追究していたと思われる子どものレポートを中心に,子どもたちのレポートを再度見返すことにした。 (3)1年次の研究から得られた課題 図1-3は,1年次の研究で,自ら課題を設定し追究した,ある子どもの「ドイツ」についてのレポートである。このレポートは,中学1年社会科地理的分野「世界のさまざまな地域の調査」の単元で取り組んだものである。 この子どもは枠内①のとき,教師に「先生,ナチスってなに?」と問い,②のとき「アウトバーンってどんな本に書いてあるんやろ?」とつぶやきながら本を探しに行き,③のとき「制限時速がないのに事故がほとんどないんやって!なんで!?」と驚きの声を上げて周囲の子どもに話しかける様子が見られた。この様子から,この子どもは自らの疑問や興味関心をもとに,複数の資料をたどり,情報を得ながら学びを進めたこと,子どもの資料選択や思考には疑問をもとにした興味関心が影響図1-3 ドイツについての子どものレポート(1年次) 次の枠内は,子どもが学習をどのように進めたか,筆者が観察した様子を,順を追って示したものである。 中学校 図書館教育 4 していること,更に,①から②,②から③,③から④と,課題意識が移り変わる際,疑問や興味関心が生じていることがうかがえる。 しかし,図1-3に示した子どものレポートだけでは,子どもの学習過程や思考の過程は読み取りにくく,学習の様子の一部始終を観察していなければ,なぜこれらの情報をレポートとしてまとめることになったのか,教師が一見して判断することは難しい。また,この子どもの疑問や興味,得た情報には,ドイツの自動車産業の現状,発展の要因や背景など,教科の内容として重要な,更に学びを深めるポイントがいくつも含まれていたと考えられる。しかし,子どもがそれに気付くような手立てが打たれていたとは言えない。教師が一対一で指導に当たっていれば,そのポイントを適切なタイミングで子どもに示すことができたかもしれない。しかし,すべての子どもに対して機をとらえてアドバイスをすることは,多数の子どもを一人の教師が指導する現状では困難である。 また,教師はもちろんのこと,子ども自身も,自分の思考の流れを意識し,学習を深めるポイントを探すことを,丁寧にできていなかったのではないかと考える。この子どもの思考は,それ自体に意味のあるつながりが見られる。したがって,この思考の流れを子ども自身が意識して学習を進めたり,途中で振り返ったりすることができれば,バラバラの情報を並べたレポートではなく,思考の流れの見えるレポートが作成できた可能性も考えられる。また思考の流れを意識することで,より適切な情報や関連する情報を追加するために少し戻って調べ直したり,レポートにまとめる情報を精選したりするなど,自分自身で学習を深めるポイントに気付くことができた可能性も考えられる。 このように,改めて子どもたちのレポートを見返してみると,教科の学習内容に引き付けて学習を深めたり,広げたりするための手がかりになると考えられるポイントが,多くの子どものレポートに見られた。しかし,子ども自身がそのポイントに気付かず,学習が広がったり深まったりしなかったと考えられる例が多かった。そこで,子ども自身が思考の流れを学習の途中で振り返り,学習を広げ,深めるポイントを探しながら,学習を自分の力で進める方法が必要と考えた。 先に挙げた例からも,子どもが主体的に学習を進める際,子どもの疑問や興味関心が,学び始める動機づけや学びを進める推進力になっていること,また学習を更に深める手がかりになり得るこ

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